小児思春期・血液腫瘍科

特徴

主に小児の造血器腫瘍、固形腫瘍、難治性血液疾患の診断と内科的治療を行っています。日本小児がん研究グループ(JCCG)に参加して正確な診断に基づく有効で安全な治療を目指しています。難治性の疾患に対しては骨髄移植など造血幹細胞移植も実施しています。

近年小児がんの治療成績は非常に改善しており約7割から8割が治るようになりました、しかし現在も5-15歳の病気による死亡原因の一位は悪性新生物(小児がん)です。当科は1960年代からこどもたちの命を守るために小児がんの治療に取り組んで来ました、その姿勢は今後も変わりません。

国のがん対策推進基本計画において思春期・若年成人(AYA, adolescent and young adult)世代のがんの診療体制の充実が求められています。AYA世代は15歳から39歳までとされています、このうち小児と同様な治療が有効であることが知られている思春期世代のがん診療にも当科は取り組んでいます。そこで2022年春から診療科名を「小児思春期・血液腫瘍科」と改めることに致しました。

また多くの小児がん経験者が成人する時代となりがんそのものや治療による「晩期合併症」への対応が重視されています。当院でも長らく晩期合併症に対する長期フォローアップに取り組んできましたが、2022年春からあらためて「長期フォローアップ外来」を開始することに致しました。主治医の退職等により受診の途絶えている経験者や他の施設で小児がんの治療を受けられた経験者にも対応しますので、まず当科外来へお電話下さい。

診療対象疾患

  • 造血器腫瘍:白血病、リンパ腫など
  • 固形腫瘍:神経芽腫、腎芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍など
  • 血液疾患:再生不良性貧血、溶血性貧血、血小板減少など

小児がん及びAYA世代のがんの詳細については
「がん情報サービス:https://ganjoho.jp/public/index.html」をご覧ください。

診療内容

造血器腫瘍に対してはJCCGの中央診断システムによる正確な診断の決定後、適切な治療を実施しています。また副作用に配慮した安全な治療のため支持療法に力を入れています。再発・難治疾患には造血幹細胞移植を行っています。当科は造血・免疫細胞療法学会の移植認定施設で骨髄バンクや臍帯血バンクからの移植も可能です。

また固形腫瘍については主に病期診断、化学療法を行っており院内の外科系診療科、放射線部門、新潟大学医歯学総合病院小児外科、県外の小児がん専門施設、陽子線治療施設と密接に連携して集学的治療を行っています。

JCCGの臨床試験に参加して小児がんの標準的治療確立に協力しています。

当院の診療実績及び参加中の臨床試験は「小児がん診療施設情報:
https://www.ncchd.go.jp/center/activity/cancer_center/cancer_hospitallist/kanto_koshinetsu.html」に詳細を公開しておりますのでご覧ください。


AYA世代のがんはまれな病気であるため、診断がつくまでに時間がかかることがあります。また、診断を受けてから、そのがんを専門とする臨床医による治療が開始されるまでに時間がかかることもよくあります。当科では病理部門、血液検査部門、JCCGの中央診断システムと連携してAYA世代のがんの迅速かつ正確な診断が可能です。また確定診断後は骨軟部腫瘍科など院内の外科系診療科および新潟小児悪性腫瘍研究会を通じて新潟大学医歯学総合病院の外科系診療科と連携して速やかに治療を開始しています。


長期フォローアップのために当院を受診される経験者はAYA世代が中心となります。また壮年期となられたかたもいらっしゃいます。当院は都道府県がん診療連携拠点病院として充実した診療体制を備えており、長期フォローアップ外来での定期的な診察や検査を窓口として精密検査や治療が必要な晩期合併症が見つかった場合には院内の内科系、外科系専門医の診療を受けることが可能です。特に壮年期の晩期合併症として重要な二次がんについては専門病院として対応致します。また患者サポートセンターは就労支援や妊孕性温存ネットワークの紹介などAYA世代への支援経験も豊富です。

治療終了直後の小児期から、AYA世代、壮年期に至る文字通りの長期フォローアップがシームレスに実施できることが当院の特徴です。

療養環境

小児思春期のがんや血液疾患の治療は半年から1年以上の長期の入院生活が必要となります。各年代のライフステージに応じた療養支援が非常に大切です。患者サポートセンターの臨床心理士/医療ソーシャルワーカー、リハビリ部門、栄養科、薬剤部、鏡淵小学校院内学級、白新中学院内学級、保育ボランティア等、院内外の多職種が協力して支援を行っています。

幼少児期は作業/理学療法士、心理士や保育士があそびをつうじた発達・発育の支援を行っています。学童期は教育支援が大切です。治療の状況に応じて院内学級、ベットサイド、オンラインなど様々な授業形態が可能であり教育の機会が途切れないよう心がけています。また復学に向けて入院時から原籍校と連絡会を実施するなど原籍校とのつながりを重視しています。

思春期は小児期とはライフステージが異なることから、自らの希望や価値観に沿って最善の選択ができるよう自己決定を支援しています。高校生の教育支援は新潟県・新潟市難病相談支援センターの小児慢性特定疾病児童等自立支援員と連携して在籍校へオンライン授業の実施などを働きかけ教育の継続を依頼しています。

研究活動

JCCGが実施している25以上の臨床試験に参加しています、また試験の立案にも関わっています。米国小児腫瘍研究グループ(COG)が実施している胚細胞腫瘍の国際共同研究にも参加しています。 業績の一部を紹介します。


  1. Kawahara Y, Ogawa A, Kato M, et al. Unrelated cord blood transplantation with myeloablative conditioning for pediatric acute lymphoblastic leukemia in remission: prognostic factors. Bone Marrow Transplant 2021:56:357-367.
  2. Tomizawa D,.Ogawa A, Koh K, et al. A risk-stratified therapy for infants with acute lymphoblastic leukemia: a report from the JPLSG MLL-10 trial. Blood 2020:136:1813-1823.
  3. Kato M, Ogawa A, Teshima T, et al. Impact of graft-versus-host disease on relapse and survival after allogeneic stem cell transplantation for pediatric leukemia. Bone Marrow Transplant 2019:54:68-75.
  4. Ishida Y, Ogawa A, Kuroda T, et al. Secondary cancer after a childhood cancer diagnosis: viewpoints considering primary cancer. Int J Clin Oncol 2018:23:1178-1188.
  5. Takahashi H, Ogawa A, Saito AM, et al. High event-free survival rate with minimum-dose-anthracycline treatment in childhood acute promyelocytic leukaemia: a nationwide prospective study by the Japanese Paediatric Leukaemia/Lymphoma Study Group. Br J Haematol 2016:174:437-443.

外来診療

月~金。担当医については、「外来診療予定表」をご覧下さい。受診を希望される方はかかりつけ医の紹介状をお持ち下さい。長期フォローアップ外来の受診を希望される方はあらかじめ小児思春期・血液腫瘍科外来へ電話連絡をお願いします。

代表電話 025-266-5111

スタッフ