「遺族によるホスピス・緩和ケアの質に関する研究」結果

J-HOPE5研究による新潟県立がんセンター新潟病院緩和ケア病棟の評価結果について


はじめに


この度、「遺族によるホスピス・緩和ケアの質に関する研究5(J-HOPE5研究)」の結果がまとまりましたので、ご報告いたします。本研究は全国141施設が参加し、遺族の皆様からのご評価を通じて緩和ケアの質を客観的に測定する、わが国最大規模の調査です。

当院では80通を送付し、49通(回答率61%)という高い回答率でご協力をいただきました。ご遺族の皆様に心より感謝申し上げます。




全国と比較した当院の評価



ケアの質と満足度において全国平均以上の評価


ケアの構造・プロセス評価(CES2)では、全10項目において全国平均と同等以上の評価をいただきました。特に「医師の苦痛への対応」(98%)、「看護師の苦痛への対応」(98%)、「設備」(96%)では高い評価を得ることができました。また、全般的満足度は96%と、全国平均94%を上回る結果となりました。

望ましい死の達成度(GDI)においても、「医師を信頼していた」(89%)が全国より11ポイント高く、「納得がいくまで治療を受けられた」(71%)が10ポイント高い評価をいただきました。「ひととして大切にされていた」(96%)という評価は、私たちが最も大切にしている患者様の尊厳を守るケアが、ご遺族の皆様に届いていたことを示すものと受け止めております。



真摯に受け止めるべき課題


一方で、改善すべき課題も明確になりました。

「からだの苦痛が少なく過ごせた」は61%と、全国平均76%を15ポイント下回りました。これは当院緩和ケア病棟にとって最も重要な課題です。私どもが重症の患者様、苦痛の強い患者様を積極的に受け入れていることの反映でもありますが、苦痛緩和こそが緩和ケアの根幹であり、この結果を重く受け止めています。症状マネジメントの更なる向上、多職種チームでのアセスメント強化、より迅速な対応体制の構築に取り組んでまいります。

また、「楽しみになるようなことがあった」(27%)、「自然に近いかたちで過ごせた」(54%)も全国平均を下回りました。医療的ケアと生活の質のバランス、患者様お一人おひとりの価値観に寄り添った個別性の高いケアの提供について、改めて検討する必要があります。

「ご家族への配慮」(80%)、「費用について」(89%)も全国平均をやや下回りました。ご家族の心身の負担への配慮、経済的な不安へのサポート体制の充実が求められています。



遺族ケアの重要性


遺族の悲嘆(BGQ)では、「患者の死の受け入れ」(93%)、「悲嘆による生活の支障」(80%)など、全項目で全国平均より高い割合となりました。これは、ご遺族の悲嘆が強い傾向にあることを示しており、患者様のケアだけでなく、ご家族・ご遺族へのグリーフケアの充実が極めて重要であることを示しています。




今後の取り組み


今回の結果を踏まえ、私たちは以下の改善に取り組んでまいります。

  1. 苦痛緩和の徹底的な見直し: 引き続き苦痛の強弱に関わらず、積極的に患者様を受け入れます。同時に、症状評価の頻度と質の向上、薬剤調整の迅速化、多職種カンファレンスの充実を目指します。
  2. 生活の質を重視したケアの実践: 患者様の「したいこと」「楽しみ」を大切にし、過剰な医療介入を避ける姿勢をを目指します。
  3. 家族ケアとグリーフケアの強化: ご家族の心身の負担への配慮、経済的サポートの充実、死別後のグリーフケアプログラムの拡充を目指します。


おわりに


J-HOPE5研究の結果は、私たちに誇りと同時に謙虚さをもたらしました。

高い評価をいただいた部分は、これまでチーム全体で大切にしてきた価値観が形になったものと捉え、さらに磨きをかけてまいります。一方で、課題として明らかになった点については、真摯に向き合い、具体的な改善策を実行してまいります。

「人生の最終段階を、その人らしく、尊厳をもって過ごしていただく」という緩和ケアの本質を見失うことなく、患者様とご家族お一人おひとりに寄り添う医療を提供し続けることをお約束いたします。

貴重なご意見をお寄せくださいましたご遺族の皆様、そして当院の緩和ケアを信頼してお選びくださいました患者様・ご家族の皆様に、改めて深く感謝申し上げます。



令和7年10月23日(木)


新潟県立がんセンター新潟病院 緩和ケア内科・緩和ケア病棟スタッフ一同