定位放射線治療装置(True BEAM STX)

定位放射線治療装置(ノバリスSTx)


がんの放射線治療の充実をはかり、高精度な治療もできる汎用機であるTrue BEAM STXが2017年3月から稼働開始いたしました。従来のノバリス(初代)も高精度放射線治療の専用機ですが、STxはより広い照射野を作成できるため、従来の放射線治療も可能な汎用性の高い治療装置となっています。


世界最小幅のコリメータで照射が可能
(複雑な形状の病巣に合わせたピンポイント照射)


照射野を形成するためのタングステンの板(マイクロマルチリーフ)が照射口に埋め込まれていますが、これは世界最小の2.5mmでより細かい形状を作成できますので、腫瘍の形状にフィットした照射野での治療が可能となっています。


世界最小幅のコリメータで照射が可能


高精度な位置照合システム
(複数のモダリティの位置照合でより正確な位置での照射が可能)


毎回の照射時に腫瘍や臓器の位置を確認することができるコーンビームCT(治療台に乗った状態でのCT撮影) およびX線撮影装置に加えて、赤外線位置照合システム、ロボティックス・カウチ (ロボット制御による治療台の6軸自動補正機能のついた治療寝台)、0.1mm単位で移動可能な治療寝台、等々により、高速かつ高精度な位置照合での治療が可能となります


コーンビームCT

コーンビームCT


照射時間の短縮
(高い線量率(線量/時間)での照射が可能)


従来のリニアックは、照射領域(照射野)内ができるだけ均一になるように、X線束の間に散乱体(フラットニング・フィルタ flattening filter)を入れてあります。そのフィルタを除いたFFF(flattening filter free )での照射が可能で、通常の4倍の線量率(線量/時間)で照射ができます。比較的小照射野に限られますが、短時間での照射ができて、周囲の正常組織に照射される散乱線の低減にもつながります。STxは多種類のX線エネルギーを使用できることから、病巣の深さによって最も適切なエネルギー選択が可能です。


画像誘導放射線治療(IGRT: Image Guided RadioTherapy)


高精度放射線治療に補助技術として行うのがIGRTです。小さな腫瘍に放射線を照射する場合、周囲の正常組織への被ばくを可能な限り少なくするために精度の高い位置決めが大切ですが、STxは放射線治療を行う装置である直線加速器(リニアック)に位置合わせ専用装置kV-imagerが付きました。kV-imagerは、治療の寝台に寝ている患者さんの正面と側面のkV-X線画像(レントゲン)を撮影することで、そのとき患者さんの寝ている位置を決められた場所へと移動させます(遠隔操作により治療の寝台を動かして、位置の微調整を行います)。kV-imager装置はさらにCT(コーンビームCT)を撮影することが可能で、kV-X線画像(レントゲン)では見えにくい軟部組織による位置合わせも可能です(3D照合)。IGRTは高精度放射線治療をより安全に行うためには非常に大切な機能です。

定位放射線治療(ピンポイント放射線治療)の適応症例について

脳・頭頚部病変の定位放射線治療(SRT: Stereotactic RadioTherapy)


SRTは転移性脳腫瘍(3-4個以内)や原発性悪性脳腫瘍、頭頚部領域の悪性疾患および動静脈奇形や良性脳腫瘍(聴神経腫瘍、髄膜腫)などの良性疾患も治療の対象になります。多くの転移性脳腫瘍は3回を基本に治療を行っています。頭頚部腫瘍は部位により危険臓器が変わってきますが、3~10回、3日から2週間程度で治療は終了となります。


肺・肝臓腫瘍の体幹部定位放射線治療(SBRT: Stereotactic body RadioTherapy)


SBRTは肺腫瘍(肺癌、転移性肺腫瘍)あるいは肝腫瘍(肝癌、転移性肝腫瘍)に対して行います。体幹部の腫瘍は脳・頭頚部腫瘍と違い、呼吸性の移動があるため、それに対する対策が必要となります。

肺腫瘍、肝腫瘍いずれも4回を基本に治療を行っておりますので、治療自体は4日間(土日祭日除く)になります。

STxで可能な治療方法について

強度変調放射線治療(IMRT: Intensity Modulated RadioTherapy)


強度変調放射線治療とは、外部照射の一手法で、最新のコンピュータ技術を駆使した治療法です。専用コンピュータによる最適化計算により、照射装置から放射線が出る部分の形状を段階的に変化させながら照射する治療法です。この技術により、腫瘍への投与線量の増加と、近接する正常組織の線量低減が可能となります。例えば、前立腺癌では、前立腺の照射線量増加による治療成績向上と、近接する正常臓器(直腸など)への照射線量低減による有害事象の軽減が同時に期待できます。また、頭頚部領域では、放射線治療後長期にわたる唾液腺分泌障害の軽減が期待できます。


強度変調回転照射(VMAT: Volumetric Modulated Arc Therapy)


VMAT(Rapid Arc®)とは、IMRTの進化形になります。IMRTでは放射線照射時にはガントリー(照射筒)を固定し、様々な角度から放射線の照射を行いますが、VMATではガントリーを回転させながら同時に放出するX線の量を加減し治療を行います。本治療法の利点は、IMRTと同等あるいはより良好な線量分布を達成しつつ、治療時間の短縮が可能となったことです。治療時間の短縮は、治療台上での患者さんの体動や体内での病変の動きの影響を軽減することができますし、1日あたりの治療可能人数増加により治療までの待機時間の短縮にもつながります。