新潟県立がんセンター市民公開講座 開催報告

第23回市民公開講座「がんゲノム医療の幕開け」開催について

市民公開講座担当 副院長

田中 洋史


令和元年9月7日(土曜日)の午後、“がんゲノム医療の幕開け”をテーマとして、第23回の市民公開講座を新潟市のだいしホールにて開催させていただきました。今年6月に、網羅的ゲノム解析;Comprehensive Genomic Profiling(CGP), いわゆる“ゲノム検査”が、保険診療に導入されました。報道等でもゲノム医療や、プレシジョン・メディシンといった内容が取り上げられることが多くなりました。しかし、その内容や意義については難しい専門用語が多く、実際の検査の説明から運用に至るまで、私たち医療従事者も含めて、とまどいや混乱があるように感じています。

病理診断

そのような背景で、市民の皆様にゲノム医療に関する最新の情報をお伝えし、知識やご理解を深めていただきたい、ということが趣旨です。

講演会では当院から6名の演者が登壇し、以下のような内容でお話ししました。


  演題テーマ 内容 演者
1 ゲノムとは? ゲノムなどの言葉の定義、がん遺伝子、ゲノム検査の内容などについて 本間 慶一
がんゲノム医療センター長
2 ゲノム医療と大腸がん 大腸がんに関する最新情報、遺伝性大腸がんとゲノム検査について 丸山 聡
消化器外科部長
3 ゲノム医療と乳がん 大腸がんに関する最新情報、遺伝性乳がんとゲノム検査について 金子 耕司
乳腺外科部長
4 ゲノム医療と肺がん 肺がんに関する最新情報、遺伝子異常による肺がんとゲノム検査について 田中 洋史
内科(呼吸器)副院長
5 ゲノム医療と
カウンセリング
遺伝カウンセリングの内容、必要性と意義、遺伝性乳がん・卵巣がんについて 菊池 朗
婦人科部長
6 ゲノム医療における
看護師の役割
遺伝カウンセリングの実際について 三冨 亜希
副看護師長

講演では、ゲノム医療への期待とともに、遺伝性腫瘍に関わる倫理的側面のほか、現状では全ての患者さんに恩恵をもたらすものではない、といった課題についても説明が及びました。

残暑厳しい好天の週末でしたが、当日は107名の皆様からご参加いただき、たいへん熱心に聴講していただきました。講演の後にQ and A コーナーを設けました。そこでは、新しい医療技術に対する疑問や不安の声、また、実際に診療を受けておられる立場からの切実なご質問を多数いただきました。講演会後のアンケートでは、ご好評のお言葉をいただいた一方で、“難しくてなかなかたいへんだった”とのお言葉もいただき、今回のテーマの難しさと今後の課題を改めて認識することができました。

看護部長

このような市民公開講座の場は、市民の皆様への情報提供や啓蒙という意義があるだけでなく、私たち医療従事者にとっても、“生”の声や反応を感じることができる貴重な機会であることを改めて感じました。

開催にあたり、広告や周知で連携施設の皆様にはたいへんお世話になりました。この場を借りて心より御礼申し上げます。来年以降もテーマを変えて本市民公開講座を継続していく所存です。引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますようにどうかよろしくお願いいたします。


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