骨軟部腫瘍・整形外科:骨に発生する良性腫瘍

骨に発生する良性腫瘍

1) 外骨腫

原発性骨腫瘍のなかで最も多い骨腫瘍です。骨幹端部(骨の端)にツノのように膨隆する骨腫瘍で、表面が軟骨で覆われており、骨軟骨腫とも呼ばれています。約45%が10歳台で腫瘤を自覚したり、たまたまレントゲンを撮影した際に見つかったりします。約15%は遺伝性多発性(常染色体優性・5万人に1人)です。骨の成長に伴って外骨腫も増大してくる場合も多く、痛みや機能障害などの症状があったり、整容的に困るようであれば切除します。手術する場合は、外骨腫の付け根の部分で切除します。手術しない場合は、大きさなどにもよりますが、成長期の間は1年に1-2回程度、レントゲンなどの検査で変化がないかどうか経過観察します。稀に悪性化することがあり、外骨腫の表面の軟骨の厚みが厚くなった場合(およそ2㎝以上)の場合、悪性化を疑うとされおり、悪性化が疑われれば手術を行います。


外骨腫のレントゲン像

外骨腫のレントゲン像


2) 内軟骨腫

内軟骨腫は骨内に軟骨を形成する骨腫瘍で手足の骨(短管骨)に好発(40%以上)します。レントゲンでは骨の中心の透過性病変で石灰化を伴うのが特徴です。単発性が多いですが、多発性もあります。多発性は悪性化の危険性があり注意が必要です。痛みや増大傾向がなければ経過観察することもありますが、手や足はぶつけやすく、内軟骨腫がある骨は軽微な外力で骨折してしまうこともありますので手術治療を行います。手術では、骨に穴をあけて、腫瘍を掻き出します。掻き出したあとの空洞には人工骨を移植するのが一般的です。人工骨は、病巣の大きさにもよりますが、半年後くらいには、元の正常骨のようになります。


①内軟骨腫の術前、②人工骨挿入直後、③半年後

①内軟骨腫の術前、②人工骨挿入直後、③半年後


3) 骨巨細胞腫

骨端軟骨線が閉鎖した後の20-30歳台に発生する骨腫瘍です。増殖力が強く骨破壊性の腫瘍で、WHOの分類では中間悪性の腫瘍に位置付けられています。ごく稀に肺転移を生じることがあります。四肢の長管骨(脛骨,大腿骨,上腕骨,橈骨など)に発生することが多いですが,脊椎や骨盤などの 体幹にも発生することもあります。90%以上が疼痛で発見され、局所の疼痛や腫脹、運動障害を認めることが多い腫瘍です。H3F3A遺伝子( histone H3.3)の遺伝子変異があることがわかっています。治療は手術治療です。手術では腫瘍組織を徹底的に掻爬(掻き出し)します。しかし、それだけでは局所再発率が高く(単純掻爬では30-50%)、フェノール処理、凍結手術、アルコール処理、電気メスによる焼灼、アルゴンレーザーなど施設によってさまざまな追加治療が工夫して行われています。取り除いた後の空洞には、人工骨、自家骨移植をおこなったり、骨セメントを注入したりします。骨セメントは硬化する際に重合熱を発生し、この熱による殺腫瘍細胞効果も期待できますが、一方で関節軟骨にダメージを与えることもあり注意が必要です。また、関節軟骨の温存が困難な場合には、関節ごと切除して人工関節置換術などの再建術を行うこともあります。2014年にデノスマブという破骨細胞や骨巨細胞腫内の多核巨細胞の機能を抑制する分子標的薬が保険適応となり、骨巨細胞腫の骨破壊を抑制するために使用されるようになってきています。


4) 孤立性骨嚢腫

孤立性骨嚢腫は、骨の中に嚢腫(液体の貯留)が生じる病変であり、85%が骨端線の閉鎖する前に発生し、骨が弱くなることによって病的骨折が生じやすくなります。大部分が疼痛で発見されます。孤立性骨嚢腫は骨成長とともに成長軟骨帯から離れ、活動性が低下してゆきます。病的骨折は、上腕骨近位部に多く、次いで、大腿骨近位部とされています。骨折によって、内圧が低下し自然治癒することもあるので、非荷重肢である上腕骨では、疼痛がなければ経過観察とし、仮に骨折しても保存的治療で対応することも多いですが、下肢、特に大腿骨近位部に認められた嚢腫性の良性骨病変では荷重時痛などの症状が出現しやすく、また、病的骨折を生じると活動制限が大きいこと、大腿骨の内反変形や骨頭壊死を生ずることもあり、手術的治療が選択されることが多くなっています。手術は掻爬と人工骨移植の他、中空のピンを留置して減圧する方法もあります。


5) 非骨化性線維腫

非骨化性線維腫は小児で最も多い骨腫瘍類似疾患です。20歳以下の30-40%が非骨化性線維腫を持つとされますが、ほとんどが無症状で、たまたまレントゲン検査で見つかることがほとんどです。レントゲンでは境界明瞭な辺縁硬化像を伴う多房性の溶骨性病変で骨幹端に偏在性に存在することが多く、大腿骨遠位部の腓腹筋内側頭の付着部に認めることが多いです。年齢とともに消失することが多く、見つかる時期にもよりますが、1年程度で消退しはじめ、数年で消失したり不明瞭になります。稀に、スポーツ活動に伴う疼痛や軽微な外力による病的骨折を認めることがあります。非骨化性線維腫はほとんどの症例で活動制限を行わない経過観察でよいのですが、疼痛などの症状がある場合は、大きさなどを勘案して、活動制限を行い、それでも改善しなければ手術を検討する場合もあります。