治療に関した副作用: しびれ

はじめに

しびれは、様々な原因で起こりますが、ここでは抗がん剤の副作用で起こる「しびれ」について説明します。

一般に「しびれ」は長時間正座をした時や肘関節を何かで打った時などに四肢に感じるピリピリ、ジンジンする異常感覚のことを言いますが、抗がん剤の副作用で起こるしびれは、それと少し違いピリピリする感覚の他に「皮膚に薄皮が一枚張りついたような、触った感覚の異常」が起こることがあります。ここでは、それについて説明します。


抗がん剤によるしびれの原因

現在明確なことは分かっていません。しかし、抗がん剤に含まれている白金化合物や植物アルカロイドが、細胞に含まれるDNA(デオキシリボ核酸)に影響を与え、主に末梢神経系に障害をもたらしていると考えられています。具体的にはシスプラチン 、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、タキソール等がしびれを起こしやすい薬剤と言われています。


しびれの出現時期、強さを起こしやすい部位

しびれの出現時期や強さには個人差がありますが、抗がん剤投与後約2~3週間後くらいから手指や足底に「ピリピリする感じ」「紙が1枚張りついているような違和 感」を、訴えることが多くなります。起こりやすい部位としては手指の先端及び足先、足の裏等です。

多くの場合触れた感じが分かりにくいなどの知覚障害はありますが、動きにくいなどの運動障害は見られません。

毒性の蓄積性があることから、抗がん剤の投与回数が増す程にその症状は増強していくと考えられています。例えば、初めは指先のほんの2~3mm程に感じたしびれが 、第一関節まで広がったり、また、強さが増すこともあります。その場合、字が書きにくくなったり、またつかんでいるものを落としたりすることがありますので、湯呑みにいれた熱いお茶などには注意が必要です。


しびれに対する治療

治療終了後、個人差はありますが6~30ヶ月以上持続すると言われています。すで に起こってしまったしびれを完全にとりさる有効な治療法はありません。現在、しびれが起こらないようにするための予防法について、研究している段階です。


自覚症状を軽減させる方法

  1. 手を握ったり開いたりする、くるみなどを握る、など手指の運動を積極的に行い、末梢神経を刺激する。
  2. 温かい湯、冷たい水に交互に手足をつけて、末梢循環をよくする。
  3. しびれから痛みを伴うような場合、鎮静剤を使用し症状の緩和を図る。

などの方法を実施していくこともあります。

抗がん剤の副作用としてのしびれは、末梢にまんべんなく起こります。限局して強く起こることはありません。したがって、しびれを感じるのが左右いずれかだったり 、ある手指に限定していたり、麻痺を伴ったりしている場合は、他の疾患が疑われますので医師にご相談ください。