婦人科のがん: 子宮体がん

特徴

子宮体がんは子宮体部(内膜)に発生する悪性腫瘍です。多くの場合女性ホルモン(エストロゲン)と関連したがんですが、一部に女性ホルモンとは関係のないがんもあります。わが国では毎年約1万5000人罹患し、約2100人が死亡していますが、罹患数、死亡数とも年々増加しています。発症年齢分布をみると40歳代後半~60歳代にピークがあります。


症状

不正性器出血が最も典型的な症状です。不正出血があった場合、特に閉経後もしくは50歳以降の方は婦人科を受診しましょう。


分類

類内膜癌が最も多い組織型です。その他に漿液性癌、明細胞癌、癌肉腫などがあります

進行期 (FIGO2008)

手術所見でがんの広がりを把握し、進行期分類を決定します。がんの広がりは最も重要な予後因子です。


  1. Ⅰ期 がんが子宮体部に限局しているのもの
  2. Ⅱ期 がんが子宮頸部間質に広がるのもの
  3. Ⅲ期 がんが子宮漿膜、付属器、腟、子宮傍組織あるいは後腹膜リンパ節に広がるもの
  4. Ⅳ期 膀胱や腸の粘膜に広がるもの、あるいは遠隔転移のあるもの

検査法

1.細胞診、組織診

子宮内腔から細胞や組織を採取して、がん細胞の有無を調べます。子宮口付近から細胞を採取する子宮頸がん検診では見つからないことも多いです。しかし子宮頸がんと異なり、子宮体がんは検診による死亡率減少効果は証明されておらず、一般的には無症状な方は検診の意義は低いと考えられています。


2.画像診断

超音波検査、MRI検査、CT検査、PET-CT検査などの画像診断で腫瘍の大きさ、がんの広がりを調べて、治療法の決定の参考にします。


3.腫瘍マ-カ-

悪性腫瘍で産生される腫瘍マ-カ-(CA125、CA19-9など)を血液検査で測定することがあります。治療効果の判定、再発の診断などに有用な場合があります。

治療

1.手術

子宮がんでは、子宮摘出術、両側卵巣・卵管摘出術、後腹膜リンパ節郭清などを行います。


2.化学療法(抗がん剤治療)

子宮体がんでは再発のリスクの高いケースに手術後再発予防として、また転移があり手術施行不能例に対して化学療法行われることがあります。AP療法(アドリアマイシン+シスプラチン)やTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)が標準治療となっています。化学療法では、白血球・血小板減少、吐き気などの消化器症状、脱毛、末梢神経障害、心筋障害などの副作用が出現することがあります。


3.放射線療法

子宮体がんの治療では、手術と化学療法が中心となり、放射線療法は手術施行不可能な場合や再発例など限られたケースで行われます。


4.黄体ホルモン療法

子宮体がんでの進行・再発がん、特に高分化型類内膜癌で黄体ホルモン療法が施行されることがあります。また閉経以降に多いがんですが、まれに若い方に起こることがあります。40歳未満、高分化型類内膜癌、MRI検査で筋層浸潤の可能性が低い、血栓症の既往がないなどを満たす方では子宮温存治療が可能な場合があります。黄体ホルモン療法と子宮内膜全面掻爬を組み合わせて治療します。


5.免疫チェックポイント阻害剤

免疫チェックポイント阻害剤はがん細胞から免疫細胞に送られているブレーキをかける信号を遮断します。免疫細胞が活性化され、抗がん作用が発揮されます。免疫チェックポイント阻害剤は多くのがんで使用されています。再発の子宮体がんにキイトルーダ®が使用可能です。原則レンビマ®と併用しますが、マイクロサテライト不安定性検査で陽性の場合キイトルーダ®単独で使用することもあります。


予後

子宮体がんの進行期別予後

進行期(FIGO2008) 5年生存率
I期 93.9%
II期 87.6%
III期 71.4%
IV期 29.3%

(日本産科婦人科学会第63回治療年報から改変)


当院の子宮体がん患者数

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
53名 71名 83名 58名 90名 80名 74名

子宮肉腫含む