血液のがん: 成人慢性骨髄性白血病

成人慢性骨髄性白血病とは

白血病とは骨髄中、あるいは末梢血(体内を流れている血液)中に異常な白血球が無制限に増加する病気です。骨髄は骨の中にあるスポンジ状の組織で、血液細胞(赤血球、白血球、血小板)をつくる場所です。赤血球は酸素を体中の組織に運搬し、白血球は病原体と戦い、血小板は血液を固めて出血を止める働きを持っています。白血球はさらに顆粒球とリンパ球に分けられます。白血病は、病気の進行する速度により急性と慢性、異常な白血球の種類により骨髄性(顆粒球系)とリンパ性に分類されます。


一般に白血球は、芽球と呼ばれる未熟な細胞が骨髄中で分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)し、成熟した白血球となって骨髄から末梢血へ出ますが、その数は一定の範囲内に調節されています。白血病では、腫瘍化した芽球が正常細胞のように分化せず、しかも無制限に増加します。また急性白血病では未熟な白血病細胞のみ増加しますが、慢性白血病では未熟な白血球から正常細胞に見える成熟細胞まで、いろいろな成熟段階の細胞が増加します。慢性骨髄性白血病では、骨髄及び末梢血液中の白血球の一種である顆粒球が異常に増加しています。


慢性骨髄性白血病の原因は究明されておりませんが、他の白血病と同様に大量の放射線の被曝によって発症が増加することは、原爆の被爆者の方や放射線治療を受けた患者さんの調査によって明らかになっています。


慢性骨髄性白血病の発病はやや男性に多く全ての年齢層に起こり得ますが、40才から50才前後に多くみられます。発症の頻度は100万人に5人です。


症状

病気の初期では多くの場合無症状です。この時期には、検診等の血液検査で白血球数が増加しているため、偶然に病気が発見されることもあります。現在は検診が普及したために無症状の時期に発見される場合が増えています。白血球数の増加の程度は、発見された時期によって差がありますが、一般に末梢血1mm3当たり数万から十数万と異常高値を示します。


白血球数が増加するに従って、全身倦怠感、無気力、夜間の寝汗、体重減少等の症状が出現します。また脾臓(左上腹部にあり、血液中から古くなった血液細胞を除去したり、リンパ球をつくる臓器)の腫大に伴う腹部の膨満感、腹満感もしばしばみられます。この脾臓の腫大は無症状の場合も含めて90%以上の場合に存在します。そして胃腸を圧迫することにより、上に述べた腹部の症状が起こります。


急性白血病と異なり、貧血症状、出血傾向、感染症の合併が初診時にあらわれることはまれです。


診断

白血病が疑われた場合、まず血液検査を行い、血液の内容を顕微鏡で詳しく調べ、各成熟段階の白血球の数を調べます。次に骨髄穿刺という骨髄の検査を行います。骨髄穿刺は胸骨(胸の中央にある骨)、または腸骨(腰の骨)より皮膚の消毒、局所麻酔の後に、骨髄穿刺針という細い針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引し採取します。この骨髄の細胞を調べ、一部は前に述べた染色体の検査あるいは遺伝子の検査に使用します。これらの検査の結果、どの種類の白血病であるか診断できます。


慢性骨髄性白血病と診断された後、全身の検査も行います。脾臓の腫大の程度をみるために腹部超音波あるいは腹部CT(断層撮影)等の検査も行います。同時に、治療を受けるために問題となる臓器の機能や疾患がないかどうかも検査します。


病期

慢性骨髄性白血病はゆっくりと進行する疾患ですが、その進行により3つの病期に分けられます。


1) 慢性期

白血球数は増加していますが、芽球と呼ばれる未熟な白血球の割合は少なく、この時期は数カ月から数年間続きます。


2) 移行期

慢性期と急性転化期の間の病期で、骨髄や末梢血中の芽球の割合がやや増加し、治療による白血球数のコントロールが困難になったり、脾臓腫大が進行します。また貧血、出血傾向、発熱が出現することもあります。


3) 急性転化期

骨髄、末梢血中の芽球が30%以上に増加します。芽球期、急性期ともよばれます。慢性期と同じような化学療法では白血球数のコントロールは困難です。白血病細胞が骨髄以外の場所、例えば骨やリンパ節に腫瘤を形成することもあります。


4) 髄膜白血病

脳や脊髄の周りにある脳脊髄液や髄膜にも白血病細胞が浸潤している状態のことで、移行期や急性転化期には起こることがありますが、通常、慢性期にはみられません。


治療

慢性骨髄性白血病の治療法は病期、年齢、状態等に基づいて計画されます。主として、分子標的療法、化学療法、インターフェロン療法、放射線療法、造血幹細胞移植の5つの治療法があります。


1)分子標的療法


慢性骨髄性白血病の細胞はフィラデルフィア染色体という異常を持っていますが、5年前に、この染色体異常に対して特異的に効果を発揮する新薬が発売されました。 STI571(イマニチブ:商品名はグリベック)という薬ですが、この薬は慢性骨髄性白血病細胞に特異的に作用して悪性細胞を殺します。内服薬であり、1日1回の内服でOKですが、慢性骨髄性白血病の治療薬として現在は第1選択の薬剤となっています。通常、グリベックの内服により、2-3ヶ月程度で白血数は正常化してきますが、フィラデルフィア染色体を有する白血病細胞も白血数の減少と共に減少していきます。 悪性細胞が完全に消失する確率は40-60%程度と報告されていますが、従来の化学療法に比較して格段に治療効果が優れていると報告されています。 さらに、2009年3月に新規の分子標的薬が2種類発売されており、グリベックの副作用が強くて継続できない場合、あるいはグリベックの効果が不十分・耐性となった場合に優れた効果を発揮することが報告され、さらに初発のCMLに対しても極めて有効であることが報告されており、現在は未治療(初めて治療を受ける)の方でも両薬剤による治療を受けることが可能です。商品名はタシグナ(Nilotinib)とスプリセル(Dasatinib)ですが、両薬剤とも特徴的な副作用が報告されており、その使用に当たっては専門医(日本臨床腫瘍学会認定のがん薬物療法専門医であればベストです)の常勤している施設での治療をお勧めします。当科は現時点で張 高明、今井洋介の2名が、がん薬物療法専門医の認定を受けています。


2)化学療法


化学療法は抗がん剤を用いる治療法です。抗がん剤は内服薬、あるいは静脈注射、筋肉注射によって投与します。投与された抗がん剤が、血液の流れによって全身に行きわたり白血病細胞を殺すため、全身療法と呼ばれています。しかし脳脊髄液中への薬の移行がよくないので、脳脊髄液には直接抗がん剤を注入することがあります。これを髄注と呼びます。


3)インターフェロン療法


生物学的製剤であるインターフェロンが慢性骨髄性白血病に有効であることが報告されています。インターフェロン治療により、単に白血病細胞の数減少だけでなく、白血病細胞細胞そのものが根絶できる可能性が出てきました。しかしながら、その治療効果は全体の10-20%程度であり、その治療効果が永続的であるかどうか現在のところ不明です。


4)放射線療法


X線や他の放射線を用いて腫瘍細胞を殺す方法です。慢性骨髄性白血病に対する放射線療法は、体の外部から照射を行います。腫瘤形成による症状の緩和のため、また髄膜白血病の治療として、あるいは骨髄移植の前に必要な治療の一部として行います。


5)造血幹細胞移植


骨髄移植は、患者さんの骨髄を正常な骨髄と入れ換える治療で、慢性骨髄性白血病の完全治癒が期待できる現在唯一の治療法です。まず初めに、大量の化学療法または放射線療法との組み合わせによって、患者さんの骨髄を含めた体内にある全ての白血病細胞と正常の血液細胞を壊します。次に、白血球の型(HLA)が全部またはほぼ一致した骨髄提供者(ドナー)から正常な骨髄を採取します。ドナーは兄弟、親子、非血縁者等、患者さんによっていろいろな場合があります。最後に採取した正常の骨髄を、患者さんの静脈から輸血のように体内に入れ、破壊された骨髄と入れ換えます。このように他人の骨髄と入れ換える移植を同種骨髄移植と呼びます。現在、同種骨髄移植は全身状態が良好で臓器機能が正常であれば、65才までは施行可能と考えられています。

最近では移植前の化学療法を緩和し、移植した同種造血幹細胞が生着できるだけの化学療法として移植に伴う副作用を軽減して移植する方法(非骨髄破壊的前治療による同種造血幹細胞移植)が脚光を浴びています。この方法では実施可能年齢が70歳くらいまでと高く、 その適応範囲が拡大可能であるとされています。従来の骨髄移植の方法では治療が不可能であった方にも同種造血幹細胞移植が可能となり、有力な治療法の一つとなっています。 まだ、研究的治療の段階ですが、近い将来、慢性骨髄性白血病に対する標準的治療になる可能性があります。当科ではこの治療が可能です。


6)その他


脾臓の腫大による症状のコントロールが困難な場合、ときに手術による脾臓の摘出を行うこともあります。


病期(ステージ)別治療法

1) 慢性期


慢性骨髄性白血病の治療は、骨髄移植を除いて、慢性期を長期間持続させることがその目的となります。次のいずれかを選択します。


(1) 分子標的療法、化学療法 、インターフェロン療法


白血球数を含む血液の状態を正常に維持するように、薬剤を継続して使用します。また診断時に白血球数が多い場合には、2種類以上の抗がん剤を併用することもあります。


化学療法により、90%以上の患者さんが血液学的寛解状態(血液検査で白血球数等が正常になること)になります。化学治療による平均的な生存期間は4年から5年で、治癒は困難と考えられています。最近、分子標的療法が導入され、治療効果の向上が報告されています。また、インターフェロン療法も有効であることが報告されており、一部の症例で白血病細胞が消失することが知られていますが、その効果は現在のところ、確立されていません。


現時点では、まず、グリベックによる治療を開始し、白血数や異常細胞の減少の状態を注意深く観察しながら、その後の治療方針を決定するのが標準的治療であると考えられます。


(2) 同種造血幹細胞移植


病期が進行していない慢性期に造血幹細胞移植を施行した場合、最も高い治癒率が期待できるとされてきましたが、分子標的治療が可能となった現在、実施件数は劇減しています。患者さんが60才以下の場合には、診断後早期にHLAの検査を行い、兄弟あるいは親子の中に移植可能なドナーがいるかどうか調べます。血縁者にドナーがいない場合、骨髄移植推進財団による骨髄バンクでドナーを探すことも行われています。治癒率は、年令やドナーの種類によって異なります。HLA一致の同胞がドナーの場合には、65%から80%の治癒が期待できます。非血縁ドナーからの移植の成績は、 まだ十分検討されていませんが、HLA一致の同胞からの移植に 比較するとやや劣ります。詳細は“造血幹細胞移植”の項をご参照ください。


分子標的療法、化学療法、インターフェロン療法を選択するか、造血幹細胞移植を選択するかは非常に慎重な検討が必要です。そのためにはどちらの治療法についても十分な経験と知識のある施設でご相談ください。


白血球数がほぼ正常な場合、無治療で経過観察し、病期が進行して治療が必要となったら、治療を開始することもまれにあります。


2) 移行期


次の治療法のいずれかを選択します。


(1)造血幹細胞移植


慢性期に比べると成績は悪くなりますが、治癒の可能性はあります。


治癒率は30~40%となります。


(2)化学療法


白血球数を下げることを目的とします。


(3)新しい抗がん剤や新しい抗がん剤と現在ある抗がん剤との多剤併用の臨床試験への参加


(4)輸血による症状の緩和


(1)以外の治療法の予後は極めて不良で、平均生存期間は1年以下です。


3) 急性転化期


次の治療法のいずれかが選択されます。


(1) 造血幹細胞移植

慢性期に比べると成績は悪くなりますが、治癒の可能性はあります。治癒率は10%前後と不良です。


(2) 化学療法


(3) 新しい抗がん剤や新しい抗がん剤と現在ある抗がん剤との多剤併用臨床試験の参加


(4) 腫瘤形成による症状が存在する場合、症状緩和のための放射線療法


急性転化後の予後は極めて不良で、平均生存期間は6か月未満です。


4) 髄膜白血病


次の治療法のいずれかが選択されます。


(1) 髄注


(2) 脳及び脊髄に対する放射線照射


治癒率

1)慢性期


(1) 化学療法(ハイドロキシウレアなど)


平均的な生存期間は4~5年で、これだけでは急性転化までの時期を遅らせることは困難で、治癒はほとんど得られないと考えられています。


(2) インターフェロン療法


有効な場合では治療開始後半年くらいで効果があらわれ、ときに白血病細胞が消失します。多くの方で慢性期を延長する効果があります。これだけで治癒できるかどうかに関してはまだ結論が出ていません。


(3)グリベック、タシグナ、スプリセル


有効性は高く、これまでの欧米で行われた臨床試験の成績によると、インターフェロンが無効な場合でも3ヶ月以内に約90%の方において通常の血液検査が正常になり、6ヶ月程度で約30%の方では染色体異常も消失しています。しかし、このことが長期的な治癒につながるのか、また後に移植を行っても悪い影響がないのかなどに関しては、現時点ではわかっていません。他の薬剤との併用療法の有効性と安全性に関してもまだわかっていません。


(4)造血幹細胞移植療法


移植をしてもすべての方が治るわけではありません。再発することもあれば、移植治療の合併症のために不幸にして亡くなられる方もいます。治癒率は、年齢やドナーの種類によって異なり、HLA一致の同胞(兄弟姉妹)がドナーの場合には50~70%の治癒が期待できます。非血縁ドナーからの移植の成績は、HLA一致の同胞からの移植に比較するとやや劣ります。いずれも、診断後なるべく早く造血幹細胞移植を受けるほうが治癒する可能性が高いと考えられています。ただし、移植では抗がん剤の副作用、移植後の免疫反応(移植片対宿主病、GVHD)や重篤な感染などの治療関連死が10%~20%の方におこりますが、その多くが移植後3ヶ月以内におこることは承知しておく必要があります。


(5) ドナーリンパ球輸注療法(DLI、DLT)


造血幹細胞移植後に慢性骨髄性白血病が再発してしまった場合に、成分献血とほぼ同様の方法で、同じドナーの方からリンパ球成分を採取して、これを患者さんに輸注すると、抗がん剤などを用いなくとも、約80%の方でまた長期の寛解状態(病気の細胞が消失した状態)にすることができます。現在は、骨髄バンクを介した非血縁からいただいた場合でもドナーの方からリンパ球をいただけるようになっています。ただし、移植片対宿主病(GVHD)や白血球が減ったりして重大な合併症が出現することがあるので、慎重に行われます。


2)移行期


造血幹細胞移植療法では30~40%の方に治癒が期待できますが、これ以外の従来の治療では、結局は次に述べる急性転化期に移行し、移行期と診断されてからの平均生存期間は1年以下とされています。


欧米の臨床試験の成績では、グリベックによる治療を行うと約60%の方で通常の血液検査が正常になり、約20%の方で慢性期に戻り、約15%の方では染色体異常も消失します。効果は治療開始後1~3ヶ月くらいで見られ、約60%の方で9ヶ月もの間病気の進展が見られなくなりました。


3)急性転化期および髄膜白血病


造血幹細胞移植療法では約10%の方が治癒を期待できますが、これ以外の従来の治療での平均生存期間は6ヶ月未満とされています。


欧米の臨床試験の成績では、グリベックによる治療を行うと急性転化期における効果は治療開始後約1ヶ月で見られ、約20%の方で慢性期に戻り、約5%の方では染色体異常が消失しました。ただし、病気が治癒するかに関してはまだわかっていません。


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