第40巻第1号 2001年1月

目次

巻頭言


  • 創立40周年に思う:1
    栗田雄三

総説


症例


資料・統計


  • 1999年悪性疾患入院患者統計:48

要旨

県立がんセンター新潟病院の消化器内視鏡の歴史

小越和栄


県立がんセンター新潟病院が開院した昭和36年4月に胃カメラの検査が開始された。それから40年に亘り、早期胃癌の発見および十二指腸内視鏡の開発を行うなど、内視鏡室の歴史を振り返り、主な事柄をまとめた。


病院機能評価認定後の改善に向けて

佐々木壽英


当院は平成12年8月28日に日本医療評価機構の病院機能評価を受審し、10月16日付けで「認定証」を取得した。評価結果でも5っ星が3つ、4っ星以上が70.9%と高い評価を受けた。病院機能評価受審を機に、改善の柱を「患者さんを中心とした医療」に置いて、半年間という短い準備期間であったが全ての部署で見直し作業が行われ、改善に向けての取り組みが精力的になされた。受審することで職員が一丸となって改善を行っていく意識の向上が受審の本来の目的であり、これが達成出来たことは認定証を取得したこと以上の収穫であった。病院機能評価受審はKAIZEN(改善)の出発点であり、受審後は、KAIZENの継続が課題となる。当院における病院機能評価認定証取得までの経緯と今後の新たな改善取り組みについて述べ、平成17年7月の再受審へ向けて改善の方向性も示した。


入院患者に対する満足度調査

佐々木壽英、鈴木光江


日本医療機能評価機構による病院機能評価を受審するため、当院の医療に対する患者満足度を調査する目的で、入院患者に対するアンケート調査を2000年6月に実施した。

入院患者443名に対してアンケート用紙を配布した。回収は411名で、回収率は92.8%であった。入院生活の綜合的な満足度では、非常に満足が29.7%、やや満足が27.7%、満足が34.9%と良好であった。しかし、やや不満足が7.4%、非常に不満足が0.3%あったことは、今後の改善に向けての反省材料としなければならない。


外来患者に対する満足度調査

佐々木壽英、鈴木光江


日本医療機能評価機構による病院機能評価を受審するため、当院の医療に対する患者満足度を調査する目的で、外来患者に対するアンケート調査を2000年6月に実施した。外来患者1000名に対してアンケート用紙を配布し、回収は839名、回収率は83.9%であった。外来の総合的な満足度は、非常に満足が124(16.5%)、やや満足が188(25.1%)、満足が378(50.4%)と比較的良好な評価であった。しかし、やや不満足が56(7.5%)、非常に不満足が4(0.5%)あったことは謙虚に反省し、改善のための材料としなければならない。


マイクロサージャリーと組織移植

小林宏人、張 忠哲


マイクロサージャリー(微小外科)は耳鼻科、眼科、脳神経外科などの領域で発展している外科手技である。手術用双眼顕微鏡を用いて微小組織を拡大して、正確な手術を行なう外科である。マイクロサージャリーの手技は微小顕微鏡下剥離術、微小血管外科、微小神経外科からなり、特に微小血管外科は肉眼では吻合不可能な外径1.0mm前後の血管の吻合や移植を行なう。この技術により腫瘍外科は単純切除の時代から根治的広範切除や患肢温存、さらに遊離複合組織移植が可能な再建外科の時代になった。

本論文ではマイクロサージャリーの概念、歴史、器具、手技、合併症と術後処置、適応と禁忌、臨床応用について述べる。


県立がんセンター新潟病院における消化性潰瘍の研究40年

加藤俊幸、小越和栄、秋山修宏、本山展隆、船越和博、小堺郁夫、佐藤浩一郎、斉藤征史、丹羽正之、原 義雄


1961年の開院から消化器内科として上部消化器内視鏡による胃癌の早期発見とともに消化性潰瘍に対する治療にも積極的に取り組み、多くの研究を行ってきた。胃液などの胃酸分泌や潰瘍瘢痕の臨床病理学的検討から消化性潰瘍の再発難治化を主題とし、治療法としては胃酸分泌抑制剤や粘膜防御因子増強剤など多くの薬物療法の臨床効果を検討してきた。 さらにH.pylori感染が注目されるとともに胃内菌分布や酸分泌との関連性から潰瘍の病態を見直し、除菌療法による再発率抑制という革新的な時代を迎えている。これまでの40年間におよぶ胃十二指腸潰瘍の研究の歩みをまとめた。


膀胱原発悪性リンパ腫の1剖検例

根本啓一、太田玉紀、本間慶一、糸井俊之、小松原秀一、今井洋介、張 高明


膀胱原発の悪性リンパ腫の1剖検例を報告した。

症例は82才、女性。平成10年9月、下肢の脱力、乏尿出現。尿、末梢血中に異型細胞を、膀胱内に腫瘍がみられ、悪性リンパ腫が疑われたため当病院泌尿器科に入院。リンパ節腫大、肝脾腫はみられなかった。入院時、WBC 40.7x10 /ul(lymphoma cells 43%),LDH 9080 IU/l,BUN 32 mg/dl,Cre.2.1mg/dl,s-IL2R3384u/ml,NCC 12.6x10/ul(lymphoma cells 88%、FAB分類L3に類似)。骨髄血中の腫瘍細胞の表面形質は、CD10,19,20,38,45,HLA-DR,IgM,kappa陽性で、B細胞形質を有していた。染色体分析では46,X,-X,1q+,2q-,6q-,+12,+13,-22。その後、全身のリンパ節腫大がみられ、生検にてバーキット腫瘍と診断。10月よりEPOCH変法1コースにて膀胱腫瘍は著明に縮小したが、強い骨髄抑制出現。その後、EPOCH2コース開始し、偽膜性大腸炎、DICがみられたが、治療にてDIC、骨髄も回復した。しかし、11月、食物の誤嚥により死亡。剖検の結果、腫瘍細胞浸潤は膀胱を中心に認められ、そのほか、組織学的に胸骨、右肺、副腎周囲に軽度にみられた。

本症例の興味ある点は、1.極めて稀な膀胱原発の悪性リンパ腫で、特にバーキット腫瘍であった点で、現在まで、検索した限りでは膀胱原発のバーキット腫瘍の報告はみられないこと、2.尿細胞診で診断されたこと、3.リンパ腫細胞の尿管圧迫による水尿管、水腎症、腎障害をきたしたことなどである。