婦人科のがん: 卵巣悪性腫瘍(卵巣がん)

特徴

  1. 卵巣がんは卵巣に発生する悪性腫瘍です。わが国では毎年約7500人が卵巣がんに罹患し、約4500人が卵巣がんで死亡しています。その死亡率は年々増加しています。
  2. 年齢分布をみると40歳以降増加し、60歳代にピークがあります。
  3. 卵巣がんには多くの種類があり、漿液性癌、粘液性癌、類内膜癌、明細胞癌などの上皮性腫瘍、間質細胞から発生した性索間質性腫瘍、胚細胞から発生した胚細胞腫瘍などに分類されます。多くは上皮性腫瘍で、90%以上を占めます。また、悪性度が低い境界悪性腫瘍も存在し、きわめて多彩です。腫瘍の悪性度、がんの種類などは、手術で摘出した腫瘍の病理組織検査で診断します。
  4. 約5-10%の卵巣がんは遺伝を背景に発生します。その多くがBRCA1/2の生殖細胞系列の遺伝子変異を原因とした遺伝性乳がん卵巣がん症候群です。詳細は
    http://www.niigata-cc.jp/jyushin/iden.htmlを参照して下さい。

症状

  1. 卵巣がんの初期段階では無症状のことが多く、早期発見が難しい疾患です。
  2. 腫瘍が大きくなると、下腹部に腫瘍を触れるようになります。進行すると腹水貯留がみられ、腹部膨満感、下腹部痛なども大切な症状です。

進行期

1.手術進行期分類

手術により、がんの広がりを把握し、手術進行期分類で診断します。がんの広がりは最も重要な予後因子です。

  • Ⅰ期 がんが卵巣に限局している
  • Ⅱ期 がんが片側または両側卵巣に存在し、さらに骨盤内臓器へ進展している
  • Ⅲ期 がんが骨盤腔を越えて、上腹部の腹膜、肝臓表面、大網、小腸に転移しているか、後腹膜リンパ節あるいは鼠径リンパ節に転移している
  • Ⅳ期 遠隔転移、肝臓実質への転移、悪性細胞が証明された胸水が認められる

2.当科で治療した卵巣がんの手術進行期別症例数(2008年~2014年)

手術進行期分類 症例数
I期 116例(55%)
II期 22例(10%)
III期 64例(30%)
IV期 8例( 4%)
210例

診断

  1. 婦人科的診察
    1. 内診により卵巣の大きさなどを確認しますが、小さな卵巣腫瘍を内診で診断することは困難です。
  2. 画像診断
    1. 超音波検査、CT検査、MRI検査などの画像診断で腫瘍の大きさ、性状などを診断します。また、卵巣がんの場合、がんの広がりの診断も行います。
  3. 腫瘍マ-カ-
    1. 悪性腫瘍で産生される腫瘍マ-カ―(CEA、CA125、AFPなど)を血液検査で測定します。腫瘍の悪性診断の参考になるだけでなく、治療効果の判定、再発の診断などにも有用です。しかし、腫瘍マ-カ-を産生しない腫瘍や小さながんの場合には、腫瘍マ-カ-に異常は認められません。
  4. 細胞診
    1. 腹水のある症例では、穿刺吸引細胞診により悪性診断を行います。

治療

  1. 手術
    1. 卵巣がんでは、子宮摘出術、両側卵巣・卵管摘出術、大網切除術、後腹膜リンパ節郭清などを行い、完全摘出を目指します。進行症例で完全摘出困難と思われる場合にも、がんの種類、広がりなどを診断する目的で手術を実施することがあります(試験開腹術や腹腔鏡検査)。正確な診断に基づいて、治療方針を決定します。
  2. 化学療法(抗がん剤治療)
    1. 卵巣がんは、抗がん剤が比較的よく効くがんです。卵巣に限局し、腹腔内にがんが広がっていない症例を除き、多くの症例で化学療法が実施されます。がんの種類に応じて適切な薬剤が選択されますが、卵巣がんの多くを占める上皮性腫瘍では、TC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)が標準的治療となっています。化学療法では、白血球・血小板減少、吐き気などの消化器症状、脱毛、末梢神経障害などの副作用が出現することがあります。血液検査など行い、慎重に治療を実施しています。
  3. 分子標的治療
    1. 近年分子標的治療がさまざまな癌種で応用されています。卵巣がん治療でも、血管内皮細胞増殖因子阻害剤のベバシズマブ(アバスチン)やポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤のオラパリブ(リムパーザ)が使用可能です。
  4. 放射線療法
    1. 卵巣がんの治療では、手術と化学療法が中心となり、放射線療法は再発例など限られた症例で行われます。
  5. 妊娠を希望される場合
    1. 将来妊娠を希望する症例では、患者さんと十分に話し合って、術式を決定します。高分化型(悪性度が比較的低い)で、がんが片側卵巣にとどまっている場合、妊孕性温存が考慮され、患側卵巣・卵管摘出術、大網切除術などが行われます。子宮と片側卵巣・卵管を残すことにより、将来妊娠する可能性が残されます。

術後検診

再発の早期発見を目的として、治療終了後、外来で定期検診を実施します。婦人科的診察、腫瘍マ-カ-などの血液検査、超音波検査、胸部レントゲン検査、CT検査などを必要に応じて行います。

予後

当科における治療成績(2008年~2014年)

5年生存率
(治療開始から5年経過して生存している確率)
手術進行期分類 5年生存率
I期 93%
II期 87%
III期 51%
IV期 44%
76%