頭頚部のがん:甲状腺がん

甲状腺がんの分類

甲状腺のがんは主に下記のように分類されます。


  • 乳頭(にゅうとう)がん
  • ろ胞がん
  • 髄様(ずいよう)がん
  • 悪性リンパ腫
  • 未分化がん

乳頭がんとろ胞がんを合わせて「分化がん」と呼び、乳頭がんが甲状腺がん全体の約90〜95%、ろ胞がんが約5%と甲状腺がんのほとんどを占め、髄様がんは比較的まれな病気です。


乳頭がん

甲状腺がんの9割以上を占める最も一般的ながんです。

男性よりも女性に圧倒的に多く、40〜60歳代でみつかることが多いですが、もっと若い年齢で発見されるケースもあります。

頚部に結節状のしこりを触れる以外には特に症状はありません。

進行は他の臓器のがんに比べ非常にゆっくりですが、リンパ節や肺などに転移がみられる場合もあります。

治療は手術による切除が第一選択となります。

手術で取りきれなかったり、再発・転移がみられる場合には、アイソトープ治療(放射線の内照射)をおこなうことがあります。

これは、あらかじめ正常の甲状腺を切除したのち、残っている甲状腺組織(転移巣など)に選択的にとりこまれる大量の放射性ヨード(131I)を内服し、残存甲状腺組織(転移巣など)を破壊する治療法です。(バセドウ病に対するアイソトープ治療の場合は、甲状腺の切除はせず、がんの時よりも少量の放射性ヨードを使用し、甲状腺の機能を抑えます。)この治療のためには前処置と短期間の入院が必要です。

他に、甲状腺ホルモン製剤の内服をおこなう場合もあります。


ろ胞がん

乳頭がんと同じく進行はゆっくりですが、手術前に診断がつきにくく、骨(特に脊椎骨)に転移しやすいという特徴があります。症状、治療のしかたや長期的な治療成績などは、乳頭がんと大差ありません。

一般に甲状腺の分化がんは、他の部位のがんと比べ進行が非常に遅く予後がよいのが特徴です。


髄様がん

甲状腺がん全体の1〜2%を占める比較的珍しいがんで、甲状腺の C 細胞と呼ばれる細胞から発生し、カルシトニンや CEA という物質を分泌します。

散発性のものと遺伝性のものがあり、後者は多発性内分泌腺腫瘍症「型(副腎の褐色細胞腫など複数の内分泌疾患を合併する)の一部分症であることがあります。転移することが比較的多く、治療としては手術がおこなわれます。

また遺伝性の場合、遺伝子の検査や家系調査などが必要となってくることもあります。


悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、リンパ組織を構成する細胞成分の腫瘍性増殖により起こる疾患ですが、甲状腺に原発することはまれで、甲状腺がん全体の2%程度といわれていす。先に述べた慢性甲状腺炎(橋本病)の人に発生しやすく、以前からあったびまん性の甲状腺腫が急速に大きくなってきた時にこの疾患を疑います。

治療としては放射線照射(外照射)と化学療法(抗がん剤)の併用がおこなわれ、比較的良好な結果が得られています。


未分化がん

甲状腺がん全体の2〜3%程度を占めるまれながんで、先に述べた分化がんが変化(「転化」といいます)して発生するものと考えられています。従って、以前からあった節性の甲状腺腫が急速に大きくなってきた時にこの疾患を疑います。

分化がんと比較しやや高齢者(60〜70歳以上)に多く、発生に男女差はほとんどありません。分化がんとは逆に進行がきわめて速く、全身的な症状を伴ってくるのが特徴す。

治療は化学療法(抗がん剤)と放射線照射(外照射)が中心で、従来有効な治療法が確立されていませんでしたが、最近は複数の抗がん剤の併用が有効であったとする報告がみられます。