婦人科のがん: 子宮がん

子宮がん | 頸部がん : 原因 | 年齢 | 症状 | 進行 | 診断 | 治療 | 予後 | 対策
体部がん : 特徴 | 症状 | 進行 | 診断 | 治療 | 予後 | 妊娠

 子宮がんとは

子宮がんは、「がん」が発生する部位より「子宮頸部がん」と「子宮体部がん」とに区別され、両者は好発年齢、発生原因、臨床症状、組織像や治療内容が異なるため区別して取り扱う疾患となっています。

 子宮頸部がん(頸がん)

[  発生原因 ]

現在は、性交渉によりヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)の感染が引き金になるとされています。そのウイルスの遺伝子型(タイプ)は100以上あり、子宮頸がんに関連しているのは(高危険群)16型、18型、31型などが考えられています。子宮頸部腫瘍(異形成、上皮内癌、浸潤癌)では、ほぼ全員がHPVに感染していると考えられています。しかし、感染しても全員が発癌するのではなく、免疫状態の低下などによってもたらされることが指摘されています。

[  年齢 ]

このHPV感染は、性行為によって引き起こされ、初交年齢が早い場合や、複数・多数の男性との性交渉により「がん」になる危険性が高くなるとされています。このため、最近では若年者(20歳代から)で発見される人が増加しています。

[  症状 ]

初期がんでは「無症状」ですが、病気が進行するに従って「性交後出血」、「不正出血」、「持続的出血」、「多量出血」となります。

[  進行期 ]

子宮頸癌は、異形成上皮(軽度→中等度→高度)→上皮内癌→浸潤癌と進行していくことが知られています。

(1) 異形成上皮

異形成病変からの消失と進行については(岩坂)、軽度異形成では進展8.9%、持続43.3%、退縮47.5%ですが、中等度異形成では進展22.7%、持続40.9%、退縮36.4%で癌化への頻度が高くなり、高度異形成は進展40.0%、持続46.7%、退縮13.3%で更に癌化への頻度が高くなり、そして、円錐切除により多数標本を作製して観察すると上皮内癌が発見される場合があります。このため、高度異形成の段階になればループ電極切除あるしは円錐切除術で病4理組織の確認を推奨します。


(2) 0期(上皮内癌)

この段階では、「がん」がまだ皮下組織に浸潤が始まっていないため、転移はなく初期癌とされています。妊娠中に上皮内癌と診断された場合には、分娩が終了した後に病変を確認してループ電極切除あるいは円錐切除術を行っています。


(3) 浸潤癌

  • I期:子宮頸部に限局
  • Ia1期: 深さ3 mm、縦 7 mm:
  • 微小浸潤癌で、この段階で脈管侵襲がなければ子宮温存手術が可能
  • Ia2期: 深さ5 mm、縦 7 mm:
  • 子宮を残すことは困難で、広汎子宮全摘、あるいは放射線療法が適応となります。挙児希望では広汎頸部切除術の選択もあります。
  • Ib1期, Ib2期:
  • 広汎子宮全摘術、放射線療法
  • II期:子宮外へ、骨盤内にとどまる:広汎子宮全摘術、放射線療法、化学療法
  • III期:骨盤壁に及ぶ、腟下1/3に及ぶ:放射線療法、化学療法
  • IV期:骨盤外へ転移、膀胱/直腸に浸潤:放射線療法、化学療法
当科における治療例の進行期別数
子宮頸部 2010年 2001-2009年 1982-2000年 合計
高度異形成 103 312 14 429
上皮内癌 78 576 317 971
Ia期 13 156 200 369
Ib期 20 189 204 413
II期 12 85 175 272
III期 5 40 60 105
IV期 2 30 16 48
合計 233 1388 986 2607

[  診断 ]

(1) 細胞診

子宮頸部で、「がん」の好発部位より直接細胞を擦過して行う方法です。

  • a. 採取法
  • (a)ヘラ、綿棒(自己採取は、初期がんの発見には不適当です)
  • b.細胞診断:2008年4月より新クラス分類(ベセスダ2001)を採用しています。
  • (a).陰性 (従来のⅠ、Ⅱ) :正常
  • (b).ASC-US,-H (従来のⅡ、Ⅲa疑い、Ⅲb疑い):異形成疑い
  • (c).LSIL (従来のⅢa):HPV感染、軽度異形成
  • (d).HSIL (従来のⅢa、Ⅲb、Ⅳ):中等度異形成、高度異形成、上皮内癌
  • (e).AGC :腺異形成
  • (f).AIS :上皮内腺癌
  • (g).悪性:浸潤癌(SCC,AC従来のⅤ)

解説

扁平細胞上皮

  • 異型扁平上皮細胞(ASC:atypical squamous cells)
  • 意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US:atypical squamous cells of undetermined significance)
  • HSILを除外できない異型扁平上皮細胞(ASC-H: atypical squamous cells,cannot exclude HSIL)
  • 軽度上皮内病変(LSIL: low grade squamous intraepithetial lesion)
  • 高度扁平上皮内病変(HSIL: high grade squamous intraepithelial lesion)
  • 扁平上皮癌(SCC:squamous cell carcinoma:)

腺細胞

  • 異型腺細胞(腺異形成)( AGC:atypical glandular cells)
  • 上皮内腺癌( AIS:adenocarcinoma in situ)
  • 腺癌(AC:adenocarcinama)

(2) HPV(human papillomavirus)検査:高リスク遺伝子型13種類

  • 子宮頸がん検診でASC-US( 軽度病変疑い )と判定された場合に検査となります。
  • 検査法は、診察台で子宮頸部から細胞採取して行います。
  • ASC-US( 軽度病変疑い)と判定されても、子宮頸がんの原因であるHPVの遺伝子型が高リスク型でなければ、将来に癌化する確率が低いです。
  • ASC-US( 軽度病変疑い )の約半数の方は陰性となり、1年後の再検査でよいです。
  • 高リスク型HPVが陽性では、コルポ診と組織検査が必要です。
  • HPV検査を希望されない方は、6か月以内の細胞診検査を再度受けてください。

(3) コルポ診(拡大鏡観察):8〜20倍の拡大

初期がんは肉眼では診断できないので、必ずコルポ診で観察し組織診が行われます。専門的な検査法です。


(4) 組織診

最終的な診断法で、コルポ診で病変より採取し治療方針が決まります。

[  治療 ]

手術療法、放射線療法、化学療法が中心となります。

(1) 手術療法

  • a. ループ電極切徐
  • ループ状の電極で病変を切除する方法で、高度異形成、上皮内癌が適応となり、局所麻酔で行い、子宮は温存されます。病変が狭い場合が適応で、将来に妊娠・出産を希望される人には適応となり、術後の妊娠経過も良好です。
  • b. レーザ−蒸散
  • レーザーで病変組織を気化・蒸散し消失する方法です。診断のための組織が残らないため、当科では行っていません。
  • c. 子宮頸部円錐切徐:レ−ザ−
  • 子宮頸部を円錐状に切除する方法で、高度異形成、上皮内癌で病変が広い場合や、Ia1期の初期がんで子宮温存を希望される場合に適応となります。
    これまでに、局所再発が約3%あり、1名(閉経後)に子宮摘出、6名には再度円錐切除手術が実施され経過良好です。
  • d. 子宮摘出
  • a) 単純子宮全摘
  • 上皮内癌で病変が頸管内の奥にある場合(高齢者に多い)や子宮筋腫合併、浸潤癌(Ia1期)などに適応となります。
  • b) 準広汎子宮全摘
  • 病変の広い浸潤癌(Ia1期)が適応となります。
  • c) 広汎子宮全摘
  • 子宮傍組織を含めて広汎に摘出し、併せて卵巣・卵管(若年者や組織型によっては温存)、骨盤内リンパ節郭清を行います。出血量が多くなる場合には予め自己血貯血も行っています。術後に発生する下肢のリンパ浮腫に対しての予防と対策、改善の指導も行っています。

(2) 放射線治療

全身状態(年齢、進行期、合併症)などを考慮して放射線療法を行います。初期がんでは、腔内からの照射のみで行われ、外来通院でも治療可能です。一般的には、骨盤内照射が併用されます。


(3) 抗がん化学療法

単独で行われることは少なく、手術療法や放射線療法に併用して行われます。


[  予後 ]

当科における進行期別の5年生存率は

進行期 当院(#1)
I期 97.5%
II期 73.9%
III期 53.3%
IV期 31.1%
#1:1982 - 2001年

[  子宮頸がんで「早期」に「後遺症が少なく」治るには ]

  1. 定期的に子宮がん検診を受診する
  2. 専門医による精密検診を受ける
  3. 自分の希望する治療法を選択する
  4. 初期がんでは治療法の選択肢が多い
  5. 治療後の定期的な検診

 子宮体部がん

[  特徴 ]

  1. 50歳以降の閉経後に多く、近年では増加傾向あり
  2. 腺癌が多い
  3. 危険因子:未産・不妊、月経異常、肥満、乳癌の既往

[  症状 ]

閉経後(1年以上月経がない場合)や、閉経周辺時期の不正性器出血が特徴とされています。

[  進行期 ]

(1) 子宮内膜増殖症

子宮内膜腺の増殖を示し、頻度は少ないものの将来子宮体癌に進行するとされています。


(2) 異型内膜増殖症(上皮内癌)

腺癌で、皮下間質組織に浸潤が始まっていないため、この段階では転移はなく初期癌とされます。


(3) 浸潤癌

  • I期:子宮頸部に限局:単純子宮全摘出術(+化学療法)
  • Ia期:筋層に浸潤が及んでいない場合
  • Ib期:筋層浸潤が1/2以下である場合
  • Ic期:筋層浸潤が1/2を越えている場合
  • II期:子宮頸部へ浸潤
  • IIa期:頸部腺のみの浸潤:単純子宮全摘出術(+化学療法)
  • IIb期:頸部は浸潤性:広汎子宮全摘術、放射線療法、化学療法
  • III期:子宮外へ及ぶが骨盤内:手術、郭清
  • IIIa:卵管・卵巣(附属器)、腹腔内細胞診陽性
  • IIIb:膣転移
  • IIIc:骨盤壁、リンパ節転移
  • IV期:骨盤外へ転移、膀胱/直腸へ浸潤:放射線療法、化学療法

当科における治療例の進行期別数
子宮体部 2010年 2001-2009年 1982-2000年 合計
上皮内癌 3 17 2 22
I期 24 251 220 495
II期 4 13 23 40
III期 17 70 64 151
IV期 1 18 9 28
肉腫、癌肉腫 1 41 12 54
合計 50 410 330 790

[  診断 ]

(1) 細胞診

子宮体部に細い管を挿入して細胞を採取する方法です。

  • a. 採取法
  • (a)採取法
  • b. 細胞診断:クラス分類
  • (a). 陰性:正常
  • (b). 疑陽性:内膜増殖症
  • (c). 陽性:「がん」の疑い
  • 子宮頸部の細胞診診断と比較し、初期病変の診断が困難な場合があります。

(2) 子宮鏡

子宮頸部より内視鏡を挿入して、子宮内部を直接観察します。外来で行い、予約制です。

(3) 組織診

最終的な診断法で、子宮内部より直接組織を採取して診断します。

[  治療 ]

手術療法が原則で、放射線療法、化学療法が術後に追加される場合があります。

(1) 手術療法

  • a. 単純子宮全摘術、両側附属器摘出術、骨盤内/傍大動脈リンパ節郭清術
  • 病変が子宮体部に限局した場合に行います。浸潤が浅い場合や組織像によっては附属器(卵巣、卵管)の温存が可能な場合があります。
  • b. 広汎子宮全摘術、両側附属器摘出術、骨盤内/傍大動脈リンパ節郭清術
  • 病変が子宮頸部に浸潤が深く及んだ場合で、子宮傍組織を含めて広汎に摘出し、併せて卵巣・卵管、骨盤内リンパ節郭清を行います。

(2) 放射線治療

摘出病理組織を考慮して放射線療法を行っています。

(3) 抗がん化学療法

単独で行われることは少なく、手術療法や放射線療法に併用して行われます。

[  予後 ]

当科における進行期別の5年生存率は

進行期 当院(#1)
I期 94.1%
II期 100.0%
III期 67.9%
IV期 15.7%
#1:1982 - 2007年

[  妊娠を希望される場合 ]

若年者に発生して、妊娠・出産を強く希望される場合には、高単位の黄体ホルモン治療があります。適応となる条件があり、(1) 高分化型内膜腺癌、(2) MRI検査で極めて浅い浸潤であること、(3) 6ヶ月間の内服治療で病変が奏効し、改善・消失する、ことなどです。高単位黄体ホルモン療法に効果がない場合には子宮摘出とならざるをえません。

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