婦人科のがん: 卵巣腫瘍
悪性卵巣腫瘍 : 特徴 | 症状 | 進行期 | 診断 | 治療 | 予後 | 妊娠を希望される場合 |
良性卵巣腫瘍 : 腹腔鏡下手術
悪性卵巣腫瘍
[ 特徴 ]
- 卵巣は下腹部の骨盤内に存在し、腫瘤が大きくな.るか、病気が進行するまで症状がでにくい。
- 40歳以降に急激に増加しますが、幼少時期から発生する場合もあります。
- 開腹手術により卵巣腫瘍を摘出して、病理組織標本を作製して最終診断となります。術前には、「がん」と診断できにくい場合があり、開腹手術ではじめて「悪性」と診断がつく場合があります。
- 危険因子:未産・不妊、月経異常、肥満、乳癌の既往
[ 症状 ]
- 無症状:子宮がん癌検診や妊娠の診察時などに偶然に発見されることがあります。
- 腹部腫瘤感、腹部膨満感:腫瘤が急激に増大して下腹部を圧迫する場合です。また、腹水が貯まった場合にも同様な症状がみられます。
- 腹痛:腫瘤が捻れを起こした場合には、下腹部に突然激痛を感じます。
[ 進行期 ]
- I期:卵巣に限局
- Ia期:一側の卵巣に限局している場合
- Ib期:両側の卵巣に発生した場合
- Ic期:腹水細胞診あるいは洗浄細胞診で腫瘍細胞が陽性の場合
- II期:子宮外へ及び、骨盤内に限局
- III期:腹腔内に限局/卵巣・卵管/リンパ節転移
- IV期:全身に及んだ場合
当科における治療例の進行期別数
| 卵巣腫瘍 | 2010年 | 2001-2009年 | 1983-2000年 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 境界悪性 | 10 | 59 | 29 | 98 |
| 悪性 | ||||
| I期 | 8 | 108 | 93 | 209 |
| II期 | 3 | 38 | 34 | 75 |
| III期 | 13 | 83 | 97 | 193 |
| IV期 | 3 | 27 | 24 | 54 |
| 合計 | 37 | 315 | 277 | 629 |
[ 診断 ]
(1) 内診
婦人科診察で卵巣の腫大を触知しますが、5cm以上にならないと判断が困難な場合があります。
(2) 超音波診断法
- a. 経腟法
- 正常の卵巣がとらえられ、腫瘤が小さくても診断が可能です。
腫瘍径5cm以上で増大傾向がある場合、またはそれ以下でも画像が混在型で悪性が疑われる場合には手術の適応と考えています。
婦人科診察台で行われます。 - b. 経腹法
- 腹部より観察しますが、小さな腫瘍では詳細に観察が困難な場合があります。
(3) 血液腫瘍マーカー
悪性では、血液で腫瘍マーカー(CEA,CA125,AFP,hCGなど)値が上昇します。初期のI期では約50%しか陽性にならないため、その診断には限界があります。
(4) 組織診断
開腹手術で摘出した卵巣腫瘍の組織診断で、最終診断となります。
術中に肉眼的に良性か悪性の判断が困難な場合には迅速病理診断を行います(病理医の常駐している病院が条件となります)。
- a. 境界悪性腫瘍
- 腫瘍の増殖性変化を示すが、可能性は少ないものの将来再発する疾患です
- b. 悪性腫瘍
- 卵巣の組織像は、多彩であり、組織診断が困難な場合があります。
[ 治療 ]
手術療法、放射線療法、化学療法が中心となります。
(1) 手術療法
子宮全摘術、両側附属器摘出術(卵巣・卵管)、骨盤内/傍大動脈リンパ節郭清術、大網切除術
(2) 抗がん化学療法
単独で行われることは少なく、手術療法に併用して行われます。
卵巣がんは、多彩な組織型を示し、抗がん剤の内容は組織型によって選択されます。
[ 予後 ]
当科における進行期別の5年生存率は
| 進行期 | 当院(#1) |
|---|---|
| I期 | 92.3% |
| II期 | 63.7% |
| III期 | 36.7% |
| IV期 | 11.7% |
| #1:1982 - 2001年 | |
[ 妊娠を希望される場合 ]
若年者に発生して、妊娠・出産を強く希望される場合には、子宮と健側卵巣を温存できる場合があります。適応となる条件があり、(1) 一側卵巣の病変、(2) 細胞診(腹腔/腹水)が陰性、(3) 癒着がない、(4) 高分化型腺癌(明細胞癌等でないこと)ことなどの条件を満たしていることです。また、迅速病理診断が行える病院であることも大切な条件です。
[ 良性卵巣腫瘍 ]
術前には、内診、超音波画像診断、MRI、CT、腫瘍マーカー(血液検査)などで悪性の可能性を判断します。しかし、卵巣腫瘍は、最終的には手術で摘出した腫瘍の組織診断で「良性、境界悪性、悪性」と最終診断されます。
[ 腹腔鏡下手術 ]
ほぼ良性と判断された場合に適応としています。全身麻酔で、臍下、下腹部に3から4ヶ所に小切開を加えて行い、術後3日目に退院して外来で抜糸します。平成21年12月までの手術数は400例で、開腹に変更となったのは高度癒着子宮内膜症、悪性腫瘍(卵巣癌や卵管癌発生)などの33例です。悪性腫瘍は3例、境界悪性腫瘍は2例です。







