乳がん

乳がんを早期発見したいとき | 乳がんの症状 | 診断方法 | 乳がんの進行程度 | 乳がんの治療 | 当科の治療成績 | 再発をしたとき | 臨床試験 | お問い合わせ

乳がんを早期発見したいとき

  • 1) 自己検診の大切さ
  •  30才を過ぎた女性は毎月、生理が終わって数日以内、閉経後や生理のない女性は毎月決まった日(例えば毎月1日とか)に、乳房がいつもと変わりないかどうかを自分で検査することをおすすめします.大きな鏡で見ながら乳房の形の変化、くぼみの有無や皮膚の色の変化を調べたりします.乳頭からの分泌物で下着が汚れていないかなども調べましょう。
     そして、異常が見つかったらなるべく早く、大きな病院の外科か乳がん専門医を受診してください。
  • 2) 定期検診、集団検診
  •  30才を過ぎた女性は年1回の専門医による定期検診を受けてください。自分で見つけることができないような小さなシコリが発見されることもあります。
     また、専門医がシコリの状態を触診することによって、「乳がんらしいかどうか」がある程度はわかります。
  • 3) 乳腺症
  •  ・・・・・もう少し詳しく
     30才を過ぎるころから女性の乳房は性周期にともなって様々に変化し始めます。その状態は閉経後2〜3年まで続きます。この変化が普通の人より強い人を乳腺症と言います。

乳がんの症状 - 乳がんかな? と思ったとき

  • 1) 乳がんの初期にみられる症状
  • (1) 乳房のシコリ
  • 乳がんは5mmぐらいから1cmぐらいの大きさになると、自分で注意深くさわるとわかるシコリになります。しかし、シコリがあるからといってすべてが乳がんであるというわけではありません。
  • (2) 乳房のえくぼなど皮膚の変化
  • 乳がんが乳房の皮膚の近くに達すると、えくぼのようなくぼみができます。
  • (3) 乳頭にみられる変化
  • 乳頭の弾力性が失われ、傾いたり、陥没したりします。乳がんが乳頭の真下にできた場合の症状です。
  • 2) 進行した乳がんの症状
  • (1) 乳房のえくぼなど皮膚の変化
  • 皮膚が赤く腫れたり、ひきつれたりします。また、炎症性乳がんは、シコリを作らず乳房表面の皮膚がオレンジの皮のように赤くなり痛みや熱感を伴うことがあります。
  • (2) 脇の下のシコリ、腕のむくみ
  • 乳がんが脇の下のリンパ節に転移すると、シコリができたり、リンパ液の流れがせき止められて腕がむくんできます。
  • 3) 遠隔転移の症状
  •  転移した臓器によって症状は違いますし、症状が全くないこともあります。骨転移により腰、背中、肩の痛みなどがでます。肺に転移すると咳がでたり、息が苦しくなる事もあります。首の回りや脇の下のリンパ節にシコリができることもあります。肝臓に転移すると、お腹が痛くなったりお腹が張ったり、食欲がなくなることもあり、黄疸がでることもあります。

診断方法

  • (1) 乳房X線診断 (マンモグラフィー)
  •  触診では見つからないような小さながんが見つかることがあります。定期検診として50才以上の女性は、年1回のマンモグラフィー検査を実施している市町村もあります。
  • (2) 超音波診断
  •  乳腺超音波検査も診断の役に立ちます。
  • (3) ヘリカルCT検査
  •  乳がんの広がりを描出し、乳房温存が可能かどうか判定します。
  • (4) 穿刺吸引細胞診
  •  シコリが見つかった場合、シコリに細い注射針をさして、一部の細胞を吸い取って調べることにより、80-90%の患者さんでは診断が確定します。
  • (5) 針生検
  •  乳房にできた病変の病名を確定するための病理組織診断用に、組織を一部または全部を取ることを生検といいます。針生検は、直径2〜3mmの針を乳房内に刺して行うもので、直接皮膚を切開して行う外科的生検より身体に対する負担が小さく、また後述する画像診断を組み合わせることで、体表から触れない病変の生検が可能です。
  • (6) 小切開による生検
  •  約4〜5cmの傷が残りますが、シコリそのものを切除して顕微鏡で検査するため、100%の確定診断が得られます。
     試験的切除は外来で20分程度で済み、その日に帰ることが出来ます。
  • (7) シコリの触れない病変に対するステレオガイド下針生検
  •  乳がん検診への乳房X線診断(マンモグラフィー)の導入により、シコリとしての感触で気づく前の微細石灰化といわれる病変の発見が増えています。当科では画像診断装置(マンモグラフィー、超音波断層撮影)を見ながら、直径2〜3mmの針を乳房に刺して、疑わしい部分の組織を吸引しながら採取します。"シコリ"として触れる前の病変でもより小さな傷痕で、確実な診断が可能となります。

乳がんの進行程度

乳がんという診断がついた場合、がんがどの程度ひろがっているか、遠隔臓器に転移しているかについての検査が行われます。その結果、がんのひろがりの程度に応じて治療方法が変わってきます。このがんのひろがりの程度を「病期」といい次のように分類します。

  • 0期:
  •  乳がんが発生した乳管または小葉の中にとどまっているもので、極めて早期の乳がんです。
  • I期:
  •  シコリの大きさが2cm(一円玉の大きさ)以下で脇の下のリンパ節には転移していない、つまり乳房の外にひろがっていないと思われる段階です。
  • II期:
  •  シコリの大きさが2cm以下で脇の下のリンパ節への転移が疑われる状態、または脇の下のリンパ節への転移の有無に関わらず、がんの大きさが2cmから5cmである状態です。
  • III期:(III期はIIIa期とIIIb期に分けられます。)
  • IIIa期:
     シコリの大きさが5cmより小さくても、脇の下のリンパ節に転移があり、しかもリンパ節がお互いがっちりと固まっていたり周辺の組織に固定している状態、または脇の下のリンパ節への転移の有無に関わらず、シコリの大きさが5cmよりも大きい状態です。
     I期からIIIa期の患者さんでは、手術で切除された乳がん組織の検査(大きさ、ホルモン受容体の有無、組織型など)、脇の下のリンパ節への転移の状況、閉経の状況などにより、手術後補助療法として化学療法、ホルモン療法が行われます。原発病巣手術の時に同時に切除した脇の下のリンパ節を顕微鏡で調べ、転移のあるリンパ節がいくつあるかによって手術後の補助療法の内容を決めたり、再発の可能性を予測することが一般的に行われます。
  • IIIb期:
     シコリが肋骨や胸筋にがっちりと固定しているか、皮膚にシコリが顔を出したり皮膚がただれたり皮膚がむくんでいるような状態、またはシコリの状態に関わらず鎖骨の上または下のリンパ節に転移があるか、同じ側の腕がむくんでいる状態です。
  • IV期:
  •  遠隔臓器に転移している場合です。骨、肺、肝臓、脳などの臓器に転移することが多いです。
     IIIb期とIV期を併せて進行がんと呼びます。
  • 炎症性乳がん:
  •  この型の乳がんは上にあげた病期の分類にはあてはまりません。乳房全体が赤く腫張し乳房の皮膚が夏みかんの皮のようになる病型で、進行が早くたちの悪いタイプです。

乳がんの治療を受けるとき

治療方法には、外科療法、放射線療法、ホルモン療法、化学療法、分子標的療法があります。

  • 1) 外科療法 (手術)
  •  乳房にできたがんを切除するために行います。がん組織を含めた周りの正常組織を同時に切除しますが、切除される正常組織の範囲は乳がんの病期により異なります。一般的には、早い時期に見つかった乳がんほど狭い範囲の正常組織を切除するだけで済みます。
     乳がんの切除と同時に、脇の下のリンパ節も切除されます、これは乳がんの拡がりを検査し、術後の補助療法の必要性を決めたり、再発の可能性を予測するために行うものです。
     乳がんの手術には、次のような方法があります。
     症状によりリンパ節の切除が必要でないと判断された人は、相談の上切除をしない場合もあります。
  • (1) 乳房温存手術・・・もう少し詳しく
  • 腫瘍摘出術
    乳房のシコリだけを切除する手術です。原則として手術後、残っている乳房に放射線照射を行います。
  • 乳房部分切除術
    シコリを含めた乳房の一部分を切除します。多くの場合、乳頭を中心にした乳房の1/4を切除します。原則として手術後、残っている乳房に放射線照射を行います。
  • 乳房温存手術後写真
    画像:乳房温存手術後写真
  • (2) 胸筋温存手術
  • 単純乳房切除術
    がんのできた側の乳房を全部切除します。リンパ節の切除はしません。
  • オッケンクロス法(非定型乳房切除術)
    乳房全部と脇の下のリンパ節を切除します。場合によっては、胸の筋肉の一部分を切除することもあります。この術式が最も一般的な乳がんの手術法です。
  • 乳房再建術・・・もう少し詳しく
    がんを切除する手術で失われた乳房を自分の筋肉または脂肪を使って形成する手術です。乳頭を形成することもできます。
    再建術を希望する方は担当医師とよく相談して下さい。
  • 同時再建(乳腺全切除)と異時再建
  • (3) 定型乳房切除術(ハルステッド法)
  •  乳房全部と胸の筋肉を切除し、脇の下のリンパ節を広く切除します。現在がんが胸の筋肉に達している場合だけ行われます。
  • (4) センチネル(見張り)リンパ節生検
  •  乳がんの切除と同時に、脇の下のリンパ節も切除されます、これは乳がんの拡がりを検査し、術後の補助療法の必要性を決めたり、再発の可能性を予測するために行うものです。一方、脇の下の手術をすると、腕のむくみ、腕の知覚異常、運動障害などの合併症が極まれに起こることがあります。最近の研究では脇の下にある特定のリンパ節を1〜2個調べることで脇の下全体のリンパ節への転移を予知することが可能であるとわかってきました。この特定のリンパ節をセンチネル(見張り)リンパ節といいます。手術前日にシコリの周囲に放射性同位元素(アイソトープ)を注射し、レントゲン写真でセンチネルリンパ節を確認します。手術当日には3cmの小切開でセンチネルリンパ節を切除し、ただちにがん細胞が転移しているかを顕微鏡で調べます。センチネルリンパ節に転移がない場合には脇の下のリンパ節は切除しません。
  • (5) 病期別治療
  •  乳がんの治療法は進行度によって、組織のタイプによって、ホルモン感受性によって、年齢によって、患者さんの希望によって色々変わります。・・・もう少し詳しく
  • 2) 放射線療法
  •  放射線にはがん細胞を死滅させる効果があり、がんを治すため、またはがんにより起こる症状を防いだり軽くするために使われます。乳がんでは原発病巣に対してだけでなく、転移部位も放射線治療が行われます。放射線治療の方法には、大きく分けて2つの方法があります。深い場所にはリニアック、浅い場所には電子線などにより、体の外から放射線を病巣に照射します。病巣周囲の正常組織にも放射線がかかるため、副作用がでることがあります。
  • 3) ホルモン療法
  •  約3割の患者さんの乳がんは、女性ホルモン(エストロゲンと呼ばれる卵胞ホルモン)によってがん細胞の増殖スピードが影響されます。手術でとった乳がん組織中のホルモン受容体を検査することにより女性ホルモンに影響されやすい乳がんか、そうでない乳がんか、ある程度わかります。女性ホルモンに影響されやすい乳がんを「ホルモン感受性乳がん」、「ホルモン依存性乳がん」と呼びます。また、女性は通常50才前後を境に卵巣の働きが衰えることにより、生理がとまり「閉経」を迎えます。ホルモン感受性乳がんの患者さんでは、タモキシフェンやアナストロゾール、エキセメスタンというホルモン剤により女性ホルモンの働きがおさえられ、がんの増殖が抑えられます。閉経前の患者さんでは、卵巣を切除するかあるいはそれと同じ効果のある注射を使用します。
     その他に、最近になって新しいホルモン剤が開発されていろいろ組み合わせて使っています。
     ホルモン療法の副作用は一般的に極めて軽いのが特徴です。
  • 4) 化学療法
  •  抗がん剤には、内服薬または静脈注射薬があります。化学療法はがん細胞を死滅させる効果があります。しかし、がん細胞以外の骨髄細胞、消化管の粘膜細胞、毛根細胞などの正常の細胞も強く影響を受けるため、白血球、血小板の減少、吐き気や食欲低下、脱毛などの副作用があらわれます。
  • 5) 分子標的療法(ハーセプチン)
  •  ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)は、これまでの抗がん剤とはまったく違ったしくみでがんを抑える新しいタイプの薬剤です。ハーセプチンはがん細胞の増殖を阻害する薬です。HER−2というタンパク質をつくる遺伝子をもっているがんがありますが、 このタンパク質ががん細胞の増殖に関係しています。ハーセプチンは、このHER−2にくっつくことでがん細胞の増殖を抑える働きがあるのです。
  • 6) 手術後の追加治療
  •  乳がんも他のがんと同じように、早い時期に見つかれば手術や放射線治療により完全に治すことができます。少し進んだ時期に発見された場合には手術をした後にホルモン療法や化学療法を約半年〜5年間行います。このように手術に加えて行われる治療を「補助療法」と呼びます。
  • 7) 手術後の観察
  •  手術後の補助療法の間や終わった後は一定の間隔で一定の期間、通院することになります。この間になにか体の変化があった場合は担当医に知らせてください。観察には、腫瘍マーカー、レントゲン検査などが行われますが、これらは再発の有無を調べるためです。
     遠隔転移があるかどうかの診断のためには、胸、骨などのレントゲン撮影、CT検査、超音波検査、アイソトープ検査などが行われます。

手術後の病期別10年生存率による当科の治療成績

病期 I II III
10年生存率 93% 79% 52%
検討症例数 (220例) (275例) (65例)

乳がんは術後5年以降に再発することもあり、術後10年を経過したところで、乳がんが治ったか否かの判定にしています。乳がんが治る割合は、病期I 93%、II 79%、III 52% です。新しいホルモン剤や抗癌剤が開発され、いろいろな組み合わせとして使われています。しかし、治療成績の向上には早期の発見がなんといってもその鍵となります。シコリの大きさが2cm(一円玉の大きさ)以下で脇の下のリンパ節には転移していない病期Iで発見された場合には90%もの高い治療成績が期待できます。

再発をしたとき

乳がんを手術した場所やその近くだけに再発した場合には、その部分だけを手術で切除したり、放射線治療をする事もあります。遠隔転移や再発が認められた場合には、通常ホルモン療法や化学療法を行い、全身に散らばったがん細胞が増えるのを抑える必要があります。

再発乳がんでは、いくつかのホルモン療法剤や化学療法剤を組み合わせて1年以上にわたり治療を続けます。これは、病気を完全に治すことはできないのですが、転移によってでる痛みなどの症状を和らげ、なるべく日常生活を支障なく送れるようにすることが目的です。

痛みや骨折、神経圧迫の危険のある骨転移部位や、脳転移に対しては放射線治療を併用します。また、がん性胸水、腹水により呼吸困難やお腹の張りが強い時には、針をさして水を抜くこともあります。頚の周りや脇の下のリンパ節に転移が疑われる場合に、確定診断を付け、がんの性質を検査する目的で切除手術が行われる場合があり、これを生検と呼びます。骨転移により神経が圧迫されたり、骨折した場合には整形外科的手術が行われます。また、脳に転移した場合に手術が行われることもあります。

治療は病期、年齢、閉経状況、ホルモン受容体の有無、HER2タンパク、健康状態により異なります。患者さんの状況に合わせた最善の治療を「標準的治療」と呼びます。ただし、標準的治療も「完全な治療」ではなく、すべての患者さんが標準的治療によって治るわけではないのです。

臨床試験

今までさまざまな治療方法が考案されましたが、それらのうちで現在、標準的治療とされるものは「臨床試験」という方法で比較検討されたものです。世界中で乳がんの患者さんに対して、よりよい治療を開発するために「臨床試験」が常に行われています。

乳がんになった患者さんは、「現在の標準的治療」をうけるか、「臨床試験中の治療」をうけるかのどちらかになります。

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