消化器がん: 胃がん

胃がんとは | 胃癌の発生頻度 | 疫学 | 死亡率 | 治癒率 | 診断治療の動向 | 解剖・機能 | 症状 | 診断 | 病期(進行度) | 治療 | 治療成績 | 再発 | 術後障害 | 「胃・友の会」 | アンケート結果

胃がんとは

胃がんは胃にできる上皮性悪性腫瘍です。年齢とともに罹患率が高くなる分化型腺がんと、若年女子にも多い未分化型腺がんに分類されます。胃がんのできる部位は、胃全体、上部、中部、下部がだいたい1:2:3:4の割合です。

がんによる死亡率は年々増加傾向にあり、昭和31年以降第1位です。しかし、これとは逆に胃がんの死亡率は年々減少の傾向にあり、がん全体の死亡に占める割合は男女とも低下してきています。ごく最近になり男性ではがんの死因の第1位は肺がんになりましたが、女性では依然として胃がんがもっとも多く、毎年5万人近くの人が胃がんにより死亡しています。年齢別では40歳から70歳に多く、60歳代にピークがあります。男女比は2:1の割合で男性に多く、若年者では女性に多い傾向があります。また、診断技術の進歩によって半数以上の方が早期胃がんで発見され、よく治るがんになってきました。

胃癌の発生頻度

胃がんの罹患率は昭和40年頃から男女ともに少しずつ減少しています。現在、胃がん罹患者は年間10万人程度はいるものと思われます。がんの発生は年齢の4乗に比例して増加するので、胃がんの患者数は高齢化とともに増加します。年齢別の手術例は49歳までの年齢層では横這いですが、50歳以上で増加し、特に70歳以上では手術率の増加もみられています。

疫学

日本では胃がんの罹患率が米国より高率ですが、日系人では日本と米国白人の中間のがん罹患率を示すことが多くみられます。これは食生活の変化をはじめとする生活環境の変化によるものと思われ、胃がんの発生が生活習慣や環境要因と関係していることを示唆しています。日本国内でも地域差が大きく、秋田、山形、新潟など東北日本海側に多く、西日本、沖縄に少ない傾向がみられます。胃がんはいまだに日本で一番多いがんですが、死亡率が大幅に減少してきた要因としては、生活水準の向上や冷蔵庫の普及による食生活の変化があげられます。戦後の食生活の欧米化と冷蔵庫の普及により塩漬け食品を食べなくなったり、高血圧対策としての減塩の勧めなどの健康教育が、食塩摂取量の減少につながり、結果的に胃がんの減少につながったと思われます。

最近ヘリコバクターピロリなどの細菌感染が注目されていますが、この菌自体には発がん性はありません。しかし、感染することにより慢性萎縮性胃炎を引き起こし、がん化に関与しているものと思われます。一方、緑茶、ビタミンC、ベータカロチンを含む緑黄色野菜の摂取は慢性萎縮性胃炎を予防する効果があるようです。

胃がんの検診は昭和32年に始まり、現在では殆どの市町村で施行されています。胃がん検診の受診率が25%以上の秋田県、山形県では過去10年間に胃がんの死亡率を20%減らすことに成功しています。胃がんの死亡はかつての半分に減少していますが、罹患数は低下しておらず、死亡率の低下がそれを上回っているためであり検診の成果と考えています。

死亡率

わが国の胃がん死亡の変化は昭和45年以降男女とも大幅に低下しており、最近20年間でほぼ半減しています。平成7年の臓器別死亡数を人口10万対でみると胃がんは約5万人でした。しかし、男性では平成6年以降肺がんと胃がんの死亡率が逆転し、男性では1位は肺がん33376人で、2位が胃がんで32016人でした。死亡統計では胃がん死亡数の減少、年齢調整死亡率の減少がみられますが、臨床面では胃がん手術例数の増加、早期胃がん手術例の増加、および進行がんの切除率の上昇がみられています。早期胃がんの増加は胃集検の普及、胃がんに対する皆さんの意識の向上、診断医の技術向上などがあげられます。最近、早期胃がんに対しては内視鏡的治療例が増加しており、手術例は横這い状態になってきているようです。

治癒率

早期がんは90%以上が治りますが、進行がんで治る割合は50%前後です。近年、胃がんの切除例数は増加していますが、その要素は

  • 高齢者人口の増加、
  • 早期発見による切除可能症例の増加、
  • 進行がんに対する切除適応の拡大、
  • 非切除例の減少、

などによるものと思われます。手術による直接死亡率は殆どなく(0.3%)、手術適応の正しい選択と技術的な向上がうかがえます。

診断治療の動向

日本では胃がんを対象に早期発見の方法が工夫され、バリウムによる二重造影法や消化器内視鏡検査+生検が確立しました。さらに色素内視鏡、拡大内視鏡、電子スコープ内視鏡、超音波内視鏡を用い、微小病変や多発病変の発見に役立てています。また、CT、超音波、MRI、血管造影、腹腔鏡などを駆使した画像診断、遺伝子診断による悪性度の把握など、わが国の胃がんの診断能は世界で冠たるものであります。

早期がんに対しては転移形式や転移頻度が明らかになったため、根治性を維持しながら縮小手術が行われています。縮小手術としては内視鏡的切除や腹腔鏡手術をはじめ、各種の機能温存手術(外科的局所切除、部分切除、分節切除、幽門保存胃切除、噴門側胃切除など)が開発され施行されています。厳重に適応を決め、これを遵守することにより、術後の遠隔成績を悪化させることなく、QOLを向上させることに貢献しています。一方、進行がんに対しては胃全摘、拡大リンパ節郭清、他臓器合併切除など根治を目指した拡大手術が積極的に行われ、遠隔成績の向上をめざしています。

解剖・機能

胃は、ちょうどみぞおちの左側にある袋状の臓器で胃袋ともいわれ、成人は最大1.5リットルの容量を持っています。胃の入り口と出口に筋肉でできた門があります。食べ物は食道を通過後、胃の入り口の門(噴門)から胃の中へ入り、出口の門である幽門から十二指腸へ少しずつ送り出されます。幽門は食事のながれを調節し、かつ胆汁の逆流を防いでいるのです。胃はJ字に似た形をしており、小さい方の弯曲部を小弯、大きい方を大弯といいます。この小弯、大弯を3等分し、上から胃上部、胃中部、胃下部と呼んでいます。

胃の生理作用には、食物をしばらくの間貯留し、胃液を分泌して混ぜ合わせ、食物をお粥状にする働きと、時期をみて少しずつ十二指腸へ送り出す働きがあります。

症状

最も多いのが上腹部痛です。以下、胃部の膨満感および不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、げっぷ、胸やけ、背部痛、口臭などがありますが、これらの症状は胃がんに特有の症状ではありません。吐血や下血をみることもありますが、これは潰瘍などによってもみられます。進行すると、体重減少、貧血、嚥下困難、疲労感などが現れます。いずれにせよ、胃がんに特有の症状はなく、早期胃がんの半数は症状がありません。定期的に胃がん検診を受け、早期発見につとめることをお奨めします。

診断

胃がんの診断方法には、一般にレントゲンによる胃造影検査と内視鏡検査があります。その他、がんのひろがり具合をみるために超音波内視鏡検査、超音波検査、CT、MRI検査、血管造影検査などを行います。

胃透視検査(レントゲン検査)

バリウムを飲んで、その影をみることで、がんの診断をします。二重造影法といって、バリウムを胃の粘膜に薄く行き渡らせて、粘膜の模様におかしいところが無いかを調べます。内視鏡検査が普及した今日でも、バリウム検査は苦痛を伴わず検診やスクリーニング検査として有用で、がんの場所やその大きさ、胃の変形など全体像が見られます。

内視鏡検査

胃内視鏡検査では、きわめて小さく、浅い粘膜にとどまった早期がんでも粘膜の発赤(ただれ)としてとしてとらえることができます。内視鏡検査では異常と思われる箇所より粘膜をつまみ取り、顕微鏡で見て、がん細胞の有無をチェックすることができます。この検査を生検組織診断といい、がんであることを決定することができます。

内視鏡超音波(EUS)診断検査

外見上は内視鏡と変わりはないのですが、その先端に超音波装置がついており、胃の内腔から胃壁構造の詳細をみることができ、がんが胃壁にどの程度入り込んでいるかを見ることができます。また、胃の外側にあるリンパ節の腫大の有無や胆嚢の異常などをとらえることができます。すなわち、がんの進み具合(進行度)を判定するのに役立ちます。

超音波(US)検査

おなかをなでるだけで体の中のことがわかる検査なので、簡単で、受ける方も負担が少なくて澄みます。体外式超音波検査では、主にがんの大きさ、腹水の有無、肝転移やリンパ節転移の詳細を把握することができます。

CT(コンピューター断層撮影)・MRI(磁気共鳴映像法)検査

CT・MRI検査は、進行したがんにおいてがんと周囲臓器との関係を詳しく見ることができます。また、周囲のリンパ節の腫大や、肺、肝、脳などへの転移の診断にも威力を発揮します。

血管造影検査

血管造影検査は肝転移巣の詳細を把握したり、進行したがんにおいてがんによる主要血管の変化を見ることことができます。術式を決める上で非常に参考になります。

胃がんに対しこのような検査を一通り行い、がんの進行程度を正確に診断することは、的確な治療法を選択する上で非常に大事なことです。

病期(進行度)

胃がんの治療法を決めたり、また治療によりどの程度治る可能性があるかを推定する場合、がんの進行度を表す病期分類が必要です。わが国では「胃がん取り扱い規約」に基づいて病期分類を行っています。進行度は主にがんの深さ(T)とリンパ節転移(N)によって決まります。他に腹膜播種(P)、肝転移(H)、遠隔転移(M)を加味します。

  • T1:がんが粘膜または粘膜下組織にとどまるもの
  • T2:がんが固有筋層または漿膜下組織にとどまるもの
  • T3:がんが胃壁の漿膜に露出しているもの
  • T4:がんが胃を越えて周囲の他臓器まですすんでいるもの
  • N0:リンパ節転移のないもの
  • N1:第1群リンパ節のみに転移を有するもの
  • N2:第2群リンパ節に転移を有するもの
  • N3:第3群リンパ節に転移を有するもの
  • N4:第4群リンパ節まで転移があるもの
  • M:遠隔転移を有するもの

*早期胃がんとは、リンパ節転移の有無にかかわらず、がんが粘膜または粘膜下組織にとどまるものをいいます。

  • Ⅰa期:リンパ節転移のない早期胃がんです。
  • Ⅰb期:がんが胃壁の外側にまで出ていないと判断されたとき、あるいは胃壁沿いでがん病巣のごく近傍に位置するリンパ節(N1)のみに転移があると判断されたものです。
  • Ⅱ 期:がんが胃壁の外側にまで達していると判断されたとき、またはリンパ節転移が第2群まで(N2)にとどまっているものです。
  • Ⅲ期、Ⅳ期は複雑になるので省略しますが、もっと進んでいるがんです。

治療

胃がんの治療には、外科療法、内視鏡療法、化学療法(抗がん剤療法)、放射線療法などがありますが、手術による切除が基本的となります。しかし、ある程度進行したがんでは、外科療法、化学療法を組み合わせて治療を行います。また、粘膜にとどまる小さな早期のがんの一部に対しては、手術を行わずに、内視鏡を用いて切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)をおこないます。

1) 外科療法

各種検査の結果を総合的に評価して、がんの進行程度と全身状態から手術方法を決めます。また、がんの発生部位や大きさにより、選択される術式は異なってきます。最近は術後のことを考えて、胃の機能をいろいろ温存する縮小手術から標準手術、拡大手術と手術方法も多種にわたっており、その人に応じたその人のために最も良い手術法を選択するように心がけています。

①標準手術

a. 幽門側胃切除術

日常もっとも多くおこなわれる術式です。胃下部、胃中部を切除し胃上部を温存します。再建は、胃と十二指腸をつなぐビルロートⅠ法か、胃と小腸をつなぐビルロートⅡ法という方法でおこないます。

b. 胃全摘術

がんが胃のほぼ全体に広がっていたり、胃上部のみにあっても、胃壁の外側まですすんでいるときにおこなわれ、胃を全部切除します。再建は、小腸を吊り上げて食道とつなぐか、食道と十二指腸の間に、25cmほどの小腸を橋渡しにつなぎます。また、この手術をおこなうときは、膵臓の尾部と脾臓を同時に切除したり、脾臓のみを切除したりすることがあります。これは、周囲のリンパ節の切除を十分におこない、なんとか長生きしていただきたいう願いから行うものです。

②拡大手術

a. 下部食道切除・胃全摘術または下部食道切除・噴門側胃切除術

がんの進展が食道に達しているときにおこなわれます。開腹による胃全摘あるいは噴門側胃切除がおこなわれます。また、左胸を開いて胸部下部食道を切除することもあります。このときは食道と吊り上げた小腸をつないで再建します。

b. 他臓器合併切除

がんが胃壁を通り越して隣接する臓器にまで広がっている場合や、リンパ節の切除を広くおこなうために、周囲の臓器も共に切除する方法です。肝切除、膵切除、横行結腸切除、脾切除、胆嚢摘出などがこれにあたります。

③縮小手術

a. 外科的局所切除

開腹はするのですが、リンパ節転移のない小さな早期胃癌に対しては、がんから1.5cm離して病巣(粘膜下組織まで)だけを切除する方法です。腹の傷も小さく、術後の胃の機能障害はまずありません。体重は全く元どおりになります。

b. 腹腔鏡下胃局所切除術

ごく一部の小さな早期胃がんに限られますが、腹部を切らずに1cmほどの筒がはいる切開を4カ所におこなうだけで澄みます。胃の局所切除なのですが、この方法では胃は全層切除となります。

c. 幽門保存胃切除術

幽門保存胃切除術後のバリウム像と内視鏡像
バリウム像と内視鏡像
胃中部の早期胃がんに対しては胃の出口にある幽門(筋肉でできている門で食事のながれを調節し、かつ胆汁の逆流を防いでいる)を支配している神経と幽門を温存して胃の中下部を切除する方法です。再建は胃と胃をつなぐビルロートⅠ法となります。

d. 噴門側胃切除術

ポーチ間置による噴門側胃切除術の
術後バリウム造影像
術後バリウム造影像
胃上部にある早期胃がんの場合におこないます。もちろん周囲のリンパ節への転移がないことも条件となります。胃上部を切除し、胃下部と胃中部の一部を温存します。再建は、食道と胃の間に15−20cmの小腸を橋渡しにつなぐ空腸間置法がおこなわれます。最近は小腸の袋(ポーチ)を作り食道と胃の間に入れる方法も行われています。

e. 姑息手術

リンパ節への転移が激しいか他臓器にがんがおよんでいる進行がんや高齢、合併症などの条件が悪いために根治手術ができないと判断されたとき、さらにがんからの出血、穿孔などにより、生命の危機が生じたときに救命処置のためにやむなくおこなう外科療法です。

2) 内視鏡的切除(EMR)

一部の小さな早期胃がんではリンパ節に転移のないことがわかってきました。これらに対しては手術をしなくても胃がんを治すことができる方法が開発されました。内視鏡を使って治療する方法です。電気を用いて切除する方法、レザー光線や高周波で焼却する方法が主体です。大きさ、形、部位、組織型など細かく限定されていますので、選択する場合は専門医とよく相談して決めてください。せっかく胃がんを早くみつけたのに治療方法をあやまってたために、取り返しがつかないようなことがおきないよう願っています。

3) 化学療法

進行した胃がんに対しては、術後の再発予防として、または遺残したがんを根絶するために抗がん剤を投与することがあります。薬は1種類のこともありますが2種類以上を併用することもあります。必ず効くという保証はありませんが、効果は期待できます。薬による治療効果だけでなく、副作用(有害事象)もでることもありますので、主治医とよく相談しながら無理をせずにのりきってもらいたいものです。一方、少し進行しすぎている場合は手術前に抗がん剤を使い、がんを小さくしてから手術することもあります。免疫療法を加えたり、放射線療法を行うこともありますが、非常に限られています。臨床試験という言葉を聞く機会があると思います。現在行われているのは標準治療ですが、標準治療と比較しながらさらに良い治療法を開発するために行うのが私たちの行っている臨床試験です。一日も早くより良い治療法をみつけていくためにも臨床試験にはご協力をお願いいたします。

治療成績

術後5年以降に再発することもありますが非常にまれです。従って、術後5年を経過すると便宜上手術によって胃がんが治ったと判定することにしています。胃がんが治る割合は、進行度Ⅰa 98%、Ⅰb89% 、Ⅱ 78%、Ⅲ 51%、Ⅳ 11%です。このように最近は手術成績が向上してきています。その要因としては、①手術手技の向上、②診断技術の進歩、③集団検診の普及、④化学療法の進歩、などが大いに貢献しているのです。また、手術死亡率は0.3%であり、胃がんの手術は非常に安全に行われるようになっています。上手にがんと戦い、打ち勝ってもらいたいものです。

再発

胃がんの治療成績は改善されているものの、再発をなくすことはできません。再発形式は腹膜再発が最も多く、さらに肝や肺などの他臓器転移によるものやリンパ節再発、局所再発などさまざまあります。しかし、早く再発がみつかれば再治療も可能です。術後少なくとも5年間は定期的に診察を受けるようにしてください。

術後障害

胃切除後に再手術を要することはまれですが、胃切除によっておこる術後障害は手技上避けられません。しかし、避けられないとはいっても、発生頻度を低く軽度にする努力は必要です。胃がんに対する術式も合理が進んでいます。根治性を損なわずに、できるだけ機能が温存される術式を選択するとともに、長期にわたる注意深い術後管理と指導により、胃切除後障害を多少なりとも克服したいものです。皆さんの協力を期待しています。主なものは以下に示す通りです。

1) 術後早期にみられる合併症

出血、縫合不全、吻合部狭窄、膵炎、胆嚢炎、腸閉塞などですが、発生頻度は減少してきています。

2) 胃切除後しばらく経ってからおきる障害

  • (1) 早期ダンピング゙症候群
  •  食物が急速に小腸へ排出され、食後30分以内に頻脈、発汗、熱感、顔面紅潮、腹部症状(腹痛、下痢、腹部膨満)をきたします。まず、低炭水化物、高蛋白、高脂肪などの食事療法を試みてください。時間の経過とともに軽快することが大半です。
  • (2) 後発性低血糖症候群
  •  低血糖症状であり、食後2ー3時間後に冷汗、めまい、手指の震え、全身倦怠、眠気などをきたします。いつもポケットにアメ玉をいれておき、症状が出たときになめて下さい。
  • (3) 貧血
  • a.鉄欠乏による貧血
  •  胃切による低酸状態のため、鉄分の吸収障害がおこることが原因です。徐放性鉄剤の投与が手っ取り早いのですが、鉄分を多く含んだ食品を毎日少しずつとるよう心がけてください。造血剤を飲むと便の色が黒くなりますが心配いりません。
  • b.ビタミンB12欠乏による貧血(悪性貧血)
  •  胃切除によりビタミンB12が小腸から吸収されにくくなるためにおこる貧血です。特に、胃を全摘した人はビタミンB12が小腸から吸収されませんので、定期的にビタミンB12の注射を受けてください。
  • (4) 逆流性食道炎
  •  胃の入り口(噴門)や出口(幽門)の括約筋機能の消失により胆汁や膵液が食道内へ逆流することによって引き起こされます。胸焼け、苦い水があがってくる、ヒリヒリするなどの症状が多いようです。寝る前は食物をたくさん取らないこと、夜は上半身を高くして寝ることなどを心がけてください。
  • (5) 骨障害
  •  食事量低下によるカルシウム不足、ビタミンD吸収障害などによって全身の骨が弱くなってしまいます。チーズ、ヨーグルトなどの乳製品やカルシウムの摂取、日光に当たることなどを心がけてください。
  • (6) 牛乳不耐症、下痢
  •  小腸での乳糖を分解する酵素活性の低下や腸管運動の異常な亢進が原因で、牛乳をのむと下痢をします。乳糖を分解してある牛乳や低脂肪の牛乳を温めて飲んで下さい。下痢のときは水分を多めにとってください。
  • (7) 消化吸収障害、栄養障害
  •  食物が胃を通過する時間が短いこと、胃酸の低下、胆汁の停滞、膵分泌機能や腸の運動低下などが原因です。良質の蛋白や高カロリー食を、少量ずつ、頻回に、ゆっくり食べるようにしてください。
  • (8) 術後胆石症
  •  胆嚢の機能が低下したり、胆汁の変化によって胆石ができやすくなります。胆石溶解剤の投与により胆石がとけることもありますが、とけなくても症状がなければそのまま様子をみることが大半です。手術が必要となることはまれです。
  • (9) 吻合部潰瘍
  •  吻合部を縫った糸やペッツ針に対する異物反応、ガストリンを産生する膵腫瘍や不適切な手術手技によって発生します。縫合糸、ペッツ針の除去や抗潰瘍剤の投与が行われます。最近は殆どみられなくなりました。
  • (10) 輸入脚症候群
  •  まれですがビルロートⅡ法の不適切な手術手技によっておきます。手術して治したほうが無難です。最近は殆どみられなくなりました。
  • (11) 残胃癌
  •  残った胃に新たに発生した胃癌のことです。早く発見することによって手術で治すことができます。術後5年以上経っていても年に一回は検査を受けてくだい。

「胃・友の会」

第2回「胃・友の会」の会場風景

私たちの「胃・友の会」をご紹介したいと存じます。本会は胃の手術を受けた方々が、「同じ様な経験をした人と話し合い、お互いの交流を深めたい」「専門家からのアドバイスを受けたい」と結成された会です。現在の会員数は約1100名で当科で手術された方々を中心に構成されていますが、希望者はどこで手術を受けた方でも入会できます。

今まで胃の手術を受けた患者さんたちが集まり、気楽に話し合える場が新潟にはありませんでした。外来は混雑しているため一人の患者さんが医師にゆっくり相談することもできません。書店へ行くと胃切除後の解説書がそれなりに見つかりますが、胃を手術した人の悩みは、手術を受けた人にしか理解できないこともたくさんあります。同じ後遺症に悩む患者さんたちが直接話し合い、相談できるならこれに越したことはありません。交流によって、ほっと感じるひとときが得られるならば、私たち医療スタッフも喜びに耐えません。

今までは私たちもがんを治すことに精一杯でしたが、最近になって、ようやく術後の患者さんの生活について考慮する余裕が出てきました。また、皆さんもできるだけ良い生活を望むようになってきました。

このような情勢の中で平成8年4月21日(日)に第1回総会を開催しました。参加は600名を越えましたが、ボランティアの協力を得て運営もうまくいき盛会のうちに終わることができました。第2回総会は平成9年6月8日(日)に開催しました。経費は年会費と入会費でまかなっていますが、実質は会員みなさんのボランティア活動に頼っている次第です。今後もいろいろなテーマで充実した運営をしていきたいと思っています。

全国にも私たちと同じ様な会がいくつかあるようです。連絡を取り合ってご一緒に活動していけたら幸いです。全国に「信頼の輪」が広がることを念じております。

アンケート結果のご紹介(参考にしてください)

  1. 胃がんの告知について
    告知されたほうが良い 80%
    告知してほしくない 14%
    わからない 6%
     
  2. もし妻や夫が胃がんだったら?
    知らせてあげたい 30%
    知らせたくない 47%
    わからない 23%
     
    自分ががんとわかったときのショックから回復するには数週間かかるようです。でもその後は治療に前向きに取り込むようになる人が大半です。信頼できる先生にかかり、よく説明してもらい治療に望むことをおすすめします。
     
  3. 胃手術後の主な症状
    a.気力、体力の低下   39%
    b.胸焼け、すっぱい液の逆流がある   25%
    c.食後の腹痛   25%
    d.便秘   25%
    e.下痢   17%
     
  4. 仕事への復帰状況
    a. 肉体労働
     復帰   48%
     内容変更   24%
     離職   28%
    b. 軽労働
     復帰   81%
     内容変更   7%
     離職   12%

「がんおよび各種疾患についての説明」へ戻る | このページの先頭

診療のご案内